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「土木遺産」散策路歩く、先人の技術に感服/小田原

箱根登山鉄道 神奈川新聞  2012年01月02日 22:38

米つきなどに活用された水車小屋
米つきなどに活用された水車小屋

小田原市内を流れる荻窪用水と山縣水道などその関連施設が2011年度の「土木遺産」として認定された。歴史的構造物として土木学会が選奨したもので市内では初の認定。同市が開設している同用水を巡る散策コースを歩きながら、その価値を確かめてみた。

荻窪用水は江戸後期の1802年に完成した農業用水路。水不足で貧村だった荻窪地域の住民を救うため、山北町の川口廣蔵が立ち上がり、小田原藩の水田開発事業として約20年間かけて開削した。総延長は10・3キロ。大小17個のトンネルを掘りつないだ。

散策コースのスタートは、箱根登山鉄道の入生田駅。取水口は箱根湯本駅の先の早川なので、用水は既に外輪山の中に入り、駅からは見えない。しだれ桜で有名な長興山・紹太寺の脇を少し登ると、コースを示す案内板がある。

斜面に点在するミカン畑の収穫は終盤になり、生産者の姿も少ない。国道1号沿いの喧噪(けんそう)はまったく聞かれない。所々で顔を出す用水は水音で気が付く。

高度な測量技術がない中、起伏や樹木で見通しがよくない山間部をどうやって正確に掘り進んだのか。対岸の石垣山から勾配を確認したという手法には驚かされた。

川口は農民出身。大工を副業としながら、灌漑(かんがい)工事に参加した経験から土木技術の知識があった程度。難工事による事故で犠牲者も出たという。

風祭駅方向に戻り、再び山腹を横切るように歩くと山縣水道水源池に着く。1909年に明治の元老・山縣有朋が別荘(同市板橋)に荻窪用水から引いた私設水道だ。コンクリート造りで直径26メートル。1世紀の歴史を感じさせない。

用水はひと山越えて荻窪地域に入った。周辺は宅地化され、かつての田園風景はもうない。現存する唯一の駒形水車や、童謡「めだかの学校」の舞台になった石碑が残されている。

水車小屋の先にある市方神社には、川口の業績をたたえた記念碑がある。その大きさに、住民の感謝の気持ちがうかがえた。

◆土木遺産

2000年度に創設。小田原市周辺では05年度に箱根・国道1号の函嶺洞門、07年度に箱根登山鉄道が認定。高い土木技術を顕彰、地域資産の核として保存することを求めている。昨年11月に認定書が交付された。

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山縣水道水源池近くの用水路
山縣水道水源池近くの用水路

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