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津波そのとき~旭市・継承のバトン<中>「海」と生きるために

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神奈川新聞  2004年09月10日公開  

 冒頭、その開催趣旨があらためて読み上げられた。

 「言葉を心の奥にしまっておいては誰からも見えません。人は文字を知っています。文字に書けばいつでも読み返すことができます。ぜひ直筆でお書きください。また、黙読は1人です。音読は一緒に楽しめます」

 今月4日、千葉県旭市の県東総文化会館。壇上から述べられたのは、同じ場所で昨年2月に発表された「旭いいおか文芸賞『海へ』」創設宣言の一節だった。


大賞を受賞したのは、地元の旭市立富浦小学校6年生のグループだった
大賞を受賞したのは、地元の旭市立富浦小学校6年生のグループだった

 多くの犠牲者を出したわがまちの教訓を語り継ぐ。二度と同じ被害を繰り返さぬために-。

 災後の苦難を乗り越えた人たちは、自らを奮い立たせながら、遺族や被災者らへのインタビューをまとめた「復興かわら版」の定期発行、語り部活動などを続けてきた。

 しかし、かわら版の発行にこだわってきた渡辺昌子(70)は胸の内を明かす。「試行錯誤を重ねてきたけれど、限られた担い手による取り組みには限界がある」

 そこで、より多くの人が発する言葉の力を生かし、「読み、書き、歌うことで継承の輪を広げよう」と立ち上げたのが文芸賞だった。東日本大震災5年の節目。実行委員会の会長に渡辺が就いた。飯岡の津波を題材にした作品もある郷土の詩人、高橋順子(72)に審査委員長を頼み、ともに生きてきた「海」をテーマに詩やエッセー、俳句などを募った。今月4日は、その公開審査の場だった。

 手探りの企画にどれほどの反響があるか不安もあったが、応募点数は予想を大きく上回る1681点。その大半を地元の小中学生が占めていた。世代を超えて語り継ぐという文芸賞の一つの狙いは共感を広げたようだった。

二面性


 しかし、予備審査を通過し、公開審査の当日に作者自らが読み上げた入選の52点には、教訓を引き継いでいくことの難しさもにじんでいた。

 小学生の率直な言葉に、それは垣間見えた。

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