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県立近代美術館葉山
見つめ直す創造の根源 上田薫コレクション展「反映の宇宙」

カルチャー 神奈川新聞  2017年03月09日 20:00

川の水を水面の反射で捉えた「流れ」シリーズ =いずれも県立近代美術館葉山
川の水を水面の反射で捉えた「流れ」シリーズ =いずれも県立近代美術館葉山

 割ったばかりの生卵を実物そっくりに描いた作品で知られている鎌倉市在住の洋画家、上田薫(88)。県立近代美術館葉山(葉山町一色)で開催中のコレクション展「反映の宇宙」では、その創造の根源を見つめ直した特集展示が行われている。初期から近作まで16点が並び、虚像を通して実像に迫る上田の冷静なまなざしを感じとることができる。

 東京芸大卒業後、広告デザイナーとして活躍した上田は1968年ごろから画家の活動を再開。その手法は、撮影した写真をスライドにし、プロジェクターでカンバスに投影した影を鉛筆でなぞり、油彩やアクリル絵の具で着色していくもので、対象を忠実に写し取るものだ。対象物だけを切り取って示したいとの意図が込められている。

 こうした描き手の感情を排除した技法によって、生卵や瓶の底などを写実的に描いた作品は、ちょうど60年代半ばに米国から日本に入ってきた、写真を元にした写実的な絵画「スーパーリアリズム」の一環と見なされてきた。

 だが、同館の朝木由香学芸員は「決してスーパーリアリズムのまねをしているのではない。これまで創造の根本がきちんと解釈されてこなかった」という。

 虚像から実像に 
 上田は「鏡そのものは描けない。でも鏡に映ったものは描ける」として、物の表面に映り込んだ虚像を描くことで、実像により深く迫ろうとしてきた。

 「シャボン玉」ではシャボン玉の皮膜に映り込んだカメラを構える自身の姿も描くことで現実感が漂う。

 その姿勢は「虚と実に敏感だから生まれるもの。目に見えるものが実体そのものではないと分かっているからこそ、実が立ち上がってくる」と朝木学芸員。本物の再現にこだわるスーパーリアリズムよりも、深く鋭い視点がある。

 見えないものへ 
 90年代になると、身の回りのものから、水の流れや雲などの自然といった目に見えないものを捉えようとの試みが始まる。

 「流れ」では、川の水に透ける底石のゆがんだイメージと水面に反射する日の光を描くことで、透明な水と同時に、刻々と変わりゆく時間までも表現した。

 「アカンサスC」は、昨年の夏に描いた新作。自宅に生えるアカンサスの葉の色濃い緑を捉えた。グラフィックデザイナーらしく葉脈や葉の形の面白さに引かれたのだろうが、つややかな葉には不気味なほどの生命力があふれている。


新作の「アカンサスC」(左)
新作の「アカンサスC」(左)

 朝木学芸員は「生命に対して開かれている感じがある。そっくりで面白いというだけの見方ではもったいない」と話した。


 26日まで。祝日を除く月曜休館。一般250円、20歳未満と学生150円、65歳以上と高校生100円。他に長谷川潔、浜口陽三らの版画約50点を展示。

 「1950年代の日本美術」展も同時開催。絵画や彫刻など92点が並ぶ。一般1200円などで「反映の宇宙」展も観覧できる。

 問い合わせは同館電話046(875)2800。


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