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分布の北限覆る…?天然記念物「早川のビランジュ」/神奈川

社会 神奈川新聞  2011年08月29日 11:02

大井町で確認されたビランジュ=同町金子の最明寺
大井町で確認されたビランジュ=同町金子の最明寺

小田原市早川の急斜面に生えている国指定天然記念物「早川のビランジュ」。高さ約25メートル、幹回り5メートルを超す巨木で、これまでは分布の北限とされてきたが、同市より北の南足柄市や大井町にもビランジュが生育していることが最近確認された。専門家によると、「自生しているのであれば北限が更新される可能性もある」とのことで、それらの出自がにわかに注目を浴びているが…。

ビランジュは赤肌の幹が特徴のバラ科の広葉樹で、温暖帯南部の植物。古い樹皮が絶えずはがれ落ちることで見える幹の肌が独特の色合いで、「ハダカノキ」や「バクチノキ」という別名もある。

早川のビランジュが国の天然記念物に指定されたのは1924(大正13)年。樹齢300年以上とされ、江戸後期の小田原藩主、大久保忠真にまつわる逸話も残る。2001年に刊行された県植物誌などによると、自生と考えられるもので最も北に分布しているものとされている。

だが、こうした定説を覆しかねない“発見”が最近あった。きっかけは大井町が自然の魅力をPRするために進めている「おおい自然園」事業。町内の樹木を調べたところ、同町金子の最明寺境内に生育する巨木がビランジュであることが分かった。付近の住民ら一部ではその存在が知られていたが、県西部の樹木や植物に詳しい同町立上大井小学校の一寸木(ちょっき)肇校長が調査で確認した。

高さ約25メートル、幹回りは1・7メートルに及び、一寸木校長は「生育状況も良く、立派な木」と話す。

さらに隣接する南足柄市内も調べたところ、寺社などに4本のビランジュが生えているのが見つかったという。

「新発見」と沸く大井町は「町の天然記念物とすることも視野に『北限』としてPRしていきたい」と注目。南足柄市も「貴重な樹木であれば、調査の必要があるかもしれない」と、その活用を視野に入れる。

一方、小田原市は「江戸時代から珍重されてきた木であり、重要な文化財であることに変わりはない」と静観の構えだ。

県立生命の星・地球博物館の勝山輝男学芸員は「寺社にあるビランジュは多くが植栽されたもの。同一年代に人の手で植えられたとも考えられる」。そう指摘する一方で「鳥が運んだ種が大木に育つこともあり、自生の可能性も否定できない」のだそうだ。

結局のところ、足柄平野のビランジュは自生なのか否か―。勝山学芸員は「樹齢100年を超えるとなれば文献史料もなく、状況で類推するしかない」としながらも、こう付け加えた。「あえて謎解きをしなくても、地元の人がビランジュに関心を持ち、大切にしようという気持ちが広がれば喜ばしいことです」

県西部に点在するビランジュは、歴史や自然への探求心をかき立てる存在であることには違いない。

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