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共謀罪考㊤
時代の正体〈449〉「自由」差し出す共謀罪 倉持麟太郎弁護士

時代の正体 神奈川新聞  2017年03月01日 03:43

くらもち・りんたろう 東京都出身。2005年慶大卒、08年中央大法科大学院卒、12年弁護士登録、横浜弁護士会に所属。14年から第二東京弁護士会。15年7月の衆院平和安全法制特別委員会で参考人として意見陳述。
くらもち・りんたろう 東京都出身。2005年慶大卒、08年中央大法科大学院卒、12年弁護士登録、横浜弁護士会に所属。14年から第二東京弁護士会。15年7月の衆院平和安全法制特別委員会で参考人として意見陳述。

【時代の正体取材班=田崎 基】政府が今国会で成立を目指す「共謀罪」の趣旨を盛り込む組織犯罪処罰法の改正案。国会では連日その不条理が追及されている。政府が挙げる「現行法で対処できない3事案」に、巧妙な欺瞞(ぎまん)を嗅ぎ取る弁護士の倉持麟太郎さんは「共謀罪は不必要」と断言し、こう問いかける。「これは私たちの『自由』を、どれだけ差し出すかという問題。私たちに、その認識と覚悟はありますか?」


 いま議論されている、犯罪を計画した段階で処罰する「共謀罪」について仮に違憲審査した場合、どうなるだろうか。

 憲法学的に共謀罪は刑法による「人身の自由」ないし「思想良心の自由」の制限に当たりうる。人身の自由は、数ある人権の中でも最も重要であるとされる。それは、表現の自由や思想良心の自由といった重要な人権も、人身の自由が侵害されてしまえば全て無きものとされてしまうからだ。

 そうした極めて重要な人身の自由に対する規制には最も厳格な違憲性審査基準が使われる。

 厳格な基準の一つ「目的審査基準」では、目的が必要不可欠で、その目的を達するための手段が必要最小限であるかを審査する。

 テロを防止し人の命を守ったり、国の治安を維持したりする目的は必要不可欠だと言えるだろう。

 だが手段はどうか。裁判例や憲法学説で「LRA」という基準がある。これはある規制が、「より制限的でない他の選びうる手段」がある場合には、その規制は違憲である、と判断する基準。これを共謀罪に当てはめてみる。

 包括的に数百という犯罪に共謀罪を適用するという規制の方法より、個別の犯罪について未遂処罰を付け加えたり、処罰対象となる行為を明示して増やしたりする方法の方が、「より制限的でない」と言える。従って論理的には違憲の問題をはらんでいる。

めちゃくちゃな論理


 このような前提を踏まえた上で、「現行法上、的確に対処できないと考えられるテロ事案」として政府が1月23日に示した三つの事例について検証してみたい。果たして本当に対処できないのだろうか。

 

(1)テロ組織が殺傷能力の高い化学薬品を製造し、これを用いて同時多発的に一般市民の大量殺人を行うことを計画した上、例えば、殺傷能力の高い化学薬品の原料の一部を入手した場合)
 この事例が該当しうる法令は現行法では「サリン等による人身被害の防止に関する法律」が存在する。その第2条で処罰対象の物質については「政令で定める」としている。

 つまり仮に現在規制されていない危険な化学薬品でも、新たに危険な物質が登場すれば行政府が「政令」で加えれば足りる。

 また、「原料の一部を入手した場合」についても、現行法の条文の文言に書き加えればよい。

 では現状で対処できない危険な薬品はどれだけ存在するのだろうか。


常に数人の法務省職員が背後に控え説明を受ける金田勝年法相=2月6日、衆院予算委
常に数人の法務省職員が背後に控え説明を受ける金田勝年法相=2月6日、衆院予算委

 2月3日の衆院予算委で民進党の山尾志桜里議員が「(現行法上規定されている)サリン等に当たらないけど殺傷能力の高い薬品の名前を挙げてほしい」と質問したところ、金田勝年法相は「具体的な薬品を想定していない」と答弁した。

 さらに安倍首相はこう答えた。

 〈テロ組織あるいは国家ぐるみで、化学兵器になる毒性物質をひそかに開発しているのは当然のことであろう。(中略)未知のものであっても準備を行っていることが明らかになれば検挙できる〉

 未知の薬品もある。だから共謀罪が必要だ-。こんな論理がまかり通るだろうか。罪と刑を事前に法定しなければならならい「罪刑法定主義」(憲法31、39条)に反する疑いすらある。

 指摘しておきたいのは、政府が例示した一つ目の事案は「政令」で危険物質をその都度加えたり、既存法の条文の細部を改正したりすれば足りる。共謀罪がないと「現行法上、的確に対処できない」とは到底言えない。

立法事実のでっち上げ


 次にこの事例。

 (2)テロ組織が複数の飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させるテロを計画した上、例えば、搭乗予定の航空機の航空券を予約した場合)
 これは一つ目の事例以上にひどい。過去の参院法務委員会で

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