1. ホーム
  2. 社会
  3. 鎌倉の緑守り半世紀、国内初ナショナルトラスト団体が風致保全で公益法人化/神奈川

鎌倉の緑守り半世紀、国内初ナショナルトラスト団体が風致保全で公益法人化/神奈川

社会 神奈川新聞  2011年04月24日 12:01

十二所果樹園で行われた草刈り体験=2009年5月(保存会提供)
十二所果樹園で行われた草刈り体験=2009年5月(保存会提供)

日本のナショナルトラストが、鎌倉から始まったとされていることをご存じだろうか。世界的には19世紀末の英国が発祥だが、国内では鎌倉の歴史ある地区の緑を守ろうと結成された鎌倉風致保存会(同市御成町)の活動がその第1号とされている。今年3月に公益財団法人に認定された保存会の歴史を振り返る。

ナショナルトラストとは、市民らが緑地などの自然環境や歴史的地区を、買い取りなどを通じて入手し、保全を図る運動。1895年に英国で結成された民間団体「ナショナル・トラスト」がはしりとなり、国際的にも広まった。

鎌倉での運動の発端は、鶴岡八幡宮の裏山「御谷(おやつ)」に持ち上がった宅地開発だった。御谷はかつて、現在の八幡宮の僧坊があった場所。その開発に、作家の大佛次郎ら著名人や地域住民から反対の声が上がり、1964年に保存会を設立。ナショナルトラストの手法に着目し、集まった募金や市の寄付を元手に、業者が取得した土地を取得し、開発をストップさせた。

運動は、歴史的地区の開発を制限する法整備にもつながった。66年制定の古都保存法は、京都、奈良、鎌倉などに「歴史的風土保存区域」や「歴史的風土特別保存地区」を定めて土地利用を制限する一方、買い入れなどの補償制度を設けた。市内での地区指定も進み「民間団体の運動が、保全の法的よりどころをつくった」と同会の野田充博事務局長は話す。

一方で、保全した緑地の維持管理には、倒れる危険がある木の処理など手入れも必要。「一木一草切らせない」という古都保存法を生んだ精神との間にジレンマがあるのも事実だ。また、緑地の所有者がこうした手間や経済的負担を嫌って開発業者に売却することなどが続けば、「保存会がその緑地を買い取り続けることはできない」との危機感も生まれた。

そうした流れの中、96年に始まった「みどりのボランティア」活動。維持管理の大切さを知ってもらおうと、市民や中学生らとともに、保存会が取得した十二所(じゅうにそ)果樹園などの土地や史跡地、寺院などの緑地の手入れを続けている。

建物の保存にも取り組む。大佛次郎茶亭(雪ノ下)の一般公開と保全助成のほか、大正後期に建てられた旧安保小児科の建物を借用。現在、保存会の事務所として活用している。

財団法人としてスタートした保存会は、昨年3月に県に公益認定を申請。今年3月の認定で、寄付金などについて税制上の優遇を受けられることになった。

「社会的な信用も上がり、寄付も受けやすくなった。今後は建物の保存で新しい展開を探れないか」と野田さん。みどりのボランティアには「自分が役に立てた」という実感を求める人が多く参加した。「そういう場を建物保全でもつくり、いろいろな人に加わってほしい」と、市民の運動から始まった活動の今後を見据えた。

【】


シェアする