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恩恵享受は限定的 マイナス金利1年 金融機関は収益悪化

経済 神奈川新聞  2017年02月16日 02:00

長期金利の推移と主な出来事
長期金利の推移と主な出来事

 日銀のマイナス金利政策導入から、16日で1年が経過した。デフレからの脱却を図り、個人消費や企業の設備投資を活性化させる狙いでの導入だったが、恩恵にあずかった産業は限定的。特に金融機関は、金利低下が業績に影を落とした。この1年を振り返る。

■影響最小限に
 「銀行経営において、この超金融緩和を中長期的に認識せざるを得なくなった」。横浜銀行の川村健一頭取は昨年末、述べた。2017年3月期の実質業務純益は前年度比2割近い減益を見込む。貸出金利回りの低下や保険商品の一部販売停止、投資型商品販売の減少が響いた。

 マイナス金利導入当初、今年3月までの中期経営計画の目標未達を強く懸念したのは神奈川銀行だ。保険販売など個人向け営業体制を強化したことや企業向けの貸し出しが増えたことを要因に、16年4~12月期決算で収益低下の影響を最小限にとどめることができたという。「中計目標はほぼ達成できそうだ」と担当者は胸をなで下ろす。

 県内のある信用金庫は金利競争のさらなる長期化を懸念しつつも「企業間マッチングやテーマ別セミナーの開催、外部機関との連携-。攻め方はいろいろある」と前を見据える。
 
■企業で温度差
 政策の効果を支持するのは一部の大企業だ。日産自動車(横浜市西区)の田川丈二常務執行役員は9日の決算会見で、「われわれとしては歴史的に低い金利という今の状況を享受していきたいと考えている」と述べた。

 一方、中小企業は懐疑的だ。県中小企業団体中央会の森洋会長は「内需の大きな柱である個人消費の回復に力強さがなく、先行きが見通せない現状がある。『資金を調達して成長につなげる好機にしよう』とまで思える環境になっていない」と訴える。内需の問題のみならず、保護主義が色濃いトランプ米大統領の政策など、国際情勢も不安要素が尽きない。「輸出産業が数多い県内ではマイナス金利政策下で投資を検討するどころか、投資の先送り、撤回も出てくるのではないか」と気をもむ。
 
■不動産は好調
 「川崎や横浜を中心に貸家市場が好調。相続や税金対策目的で設立した資産管理会社向けの融資も伸びた」(横浜銀)、「相模川以東で堅調」(神奈川銀)。活況だった不動産業。県内金融機関の融資も増加した。川崎信用金庫でも、人口増が続く武蔵小杉や溝の口周辺のマンション向けが引き続き好調という。

 横浜以南で不動産業を展開する三春情報センター(横浜市港南区)はこの1年、住宅購入希望者の金利に対する意識の向上を感じているという。

 マイナス金利の恩恵はいつまで続くのか、金利が今後上昇した際のリスク回避方法は-。同社が開催する住宅購入の入門セミナーで、金利に関する質問が増えたという。業績も伸長し「マイナス金利を巡るニュースが住宅購入を後押しした」と同社の楠元知毅執行役員は振り返る。

 住宅ローンに加え、マイナス金利の恩恵が期待された設備投資でも、企業の前向きなスタンスがほの見え始めている。横浜銀の16年12月末の貸出残高は前年同期比3・9%増で「中小企業では業種にかかわらず資金需要が堅調」(神沢健治郎執行役員)。神奈川銀の担当者も「設備投資の案件がちらほら出始めている。できるだけ低金利のうちに資金を調達したい、というのが企業の本音では。もちろん実需あってこそだが」。


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