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軍学危うい距離感 研究の軍事転用が急速拡大

社会 神奈川新聞  2017年02月09日 12:25

日本学術会議が開いたシンポジウム=4日午後、東京都港区(共同)
日本学術会議が開いたシンポジウム=4日午後、東京都港区(共同)

 大学の研究成果の軍事転用が急速に容認、拡大される情勢だ。防衛省は2017年度予算案に、前年度比18倍となる110億円の軍事研究費を計上、研究機関への助成を加速する。学界の側も、日本学術会議が4月をめどに、大戦への反省に基づく「軍事研究を行わない」とした声明を見直す検討を進めている。

学界追認、声明見直しも


 防衛省の助成は15年に始まった「安全保障技術研究推進制度」。軍事応用可能な基礎研究を対象に15年度3億円、16年度6億円を支出した。計153件の応募があり19件が採択された。

 「18倍」の背景には、軍事研究費の100億円規模の増額を求めた、昨年5月の自民党国防部会の提言がある。安倍晋三首相が議長を務める政府の総合科学技術・イノベーション会議も近く、軍民両用技術の開発を推進する検討を始める。

 歩調を合わせるように科学者を代表する日本学術会議は、従来の「戦争目的の研究には絶対に従わない」とした決議の見直しに着手した。1月に発表した中間報告は同制度について「政府の介入の度合いが大きい」と懸念を示した一方で、大西隆会長は「自衛目的ならば許される」と主張。同会議が今月4日に東京都内で開いたシンポジウムでは、会員らから「応募しないことが望ましいと明記すべきだ」などの要望が出された。

 近年、多くの大学は資金難に直面している。特に国立大は運営費交付金が10年間で1千億円以上も減少。外部資金獲得は必須で、同会議内でも理系の研究者に軍事研究の容認論が多い。

 こうした動きに対し、新潟大や関西大などは近年、同制度への応募を控えるなどの方針を確認。法政大は1月27日、田中優子総長名で「人命の収奪と人権抑圧の最たるかたちである戦争を目的とした武器等の研究・開発」を認めない、とするコメントを出した。

歴史省み、識者ら警鐘


 軍事研究を巡っては、しばしばデュアルユース(軍民両用)の利点が強調される。技術革新が日常生活にも役立つとの論理だ。


日本学術会議のシンポジウムを前に、防衛省研究公募への反対を呼び掛ける市民ら=4日、東京都港区(共同)
日本学術会議のシンポジウムを前に、防衛省研究公募への反対を呼び掛ける市民ら=4日、東京都港区(共同)

 日本学術会議の大西隆会長が学長を務める豊橋技術科学大(愛知県)は「化学工場の事故でも使える」と、防毒マスクの研究で防衛省の助成金を獲得。県内関連も相模原市中央区の宇宙航空研究開発機構(JAXA)や横須賀市の海洋研究開発機構(JAMSTEC)、厚木市の神奈川工科大などがデュアルユースで助成を受けた実績がある。

強調される「軍民両用」


 こうした「利点」に対しては、大戦下の歴史を省みる必要がある。神奈川は軍事研究の最前線だった。その代表格が、秘密戦の拠点の陸軍登戸研究所(川崎市多摩区)だ。東大や京大、東工大、横浜高等工業学校(現・横浜国大理工学部)などを出た科学者が、中国での人体実験にも使われた毒物の開発に動員された。

 2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英京大名誉教授は、著書「科学者は戦争で何をしたか」で「否応なく科学者たちは軍事目的のために駆り出され、愛国心を強いられる」と警鐘を鳴らしている。


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