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どうなる空母艦載機移駐 決断まで最終局面

社会 神奈川新聞  2017年02月07日 09:21

岩国市に移駐する空母艦載機
岩国市に移駐する空母艦載機

 在日米軍再編の日米合意から11年。厚木基地(大和、綾瀬市)に駐留する空母艦載機部隊を、岩国基地(山口県岩国市)に移駐させる計画が動きだした。安心・安全対策と地域振興策の協議を前提に、受け入れを留保していた地元は、決断の最終局面を迎えた。 

 5日に菅義偉官房長官と会談した福田良彦・岩国市長は「地域振興策に前向きな回答をもらった。最終判断の時期が来る」と記者団に語った。

 政府は、7部隊計61機の移駐が今夏にも始まり、2018年5月までに完了する見通しを通知。「配備前訓練」として、2日に岩国に飛来したE2D早期警戒機5機はその一つだ。軍人や家族ら計約3800人が厚木から転居し、米軍関係者は1万人を超えて市人口の1割相当に達する。

 同市は08~21年度、総額201億5千万円の米軍再編交付金を受け取る。16年度までだった山口県に対する交付金の期限は、3年間延長された。政府がさらに充実させる方針の財政支援と引き換えに、県市は最終的な判断を示す見込みだ。

 岩国は14年、米軍再編の一環で、普天間飛行場(沖縄県)のKC130空中給油機15機と軍人ら約870人を受け入れている。今年1月には、米国外初のF35Bステルス戦闘機が配備された。艦載機が移駐すれば、海兵隊と海軍の130機近い航空戦力が集中する極東最大の基地に変貌する。

受け入れ賛否、激しい政争化



 岩国市は艦載機の移駐先に浮上してから、激しい政争にさらされた。

 受け入れの賛否を問う2006年の住民投票で反対票が上回り、当時の井原勝介市長(66)に対抗した政府は新市庁舎建設の補助金を凍結。移駐容認派が多数を占める市議会と対立した井原氏は、08年の出直し市長選に挑んだ。

 容認派が擁立した元自民党衆院議員の福田・現市長が僅差で当選後、補助金は交付された。福田氏は12年と16年の市長選で、反対派を大差で破って当選。15年度からの総合計画に「基地との共存」を明記した。

辺野古着工 判断に影響と岩国・福田市長





 福田・岩国市長(46)が、神奈川新聞の取材に応じた。

 -米軍基地との関わり方は。

 「日米同盟は安全保障政策に不可欠で、日本はどこかで基地を受け入れなければいけない。岩国市はその一つであり、国防の一翼を担っている。基地の存在により市民にさまざまな負担があるのは確かで、まずは基地に起因する障害の軽減や除去が必要だ。一方で基地の存在を前提に、教育や観光を通じた交流や防災分野での協力など基地との共存を図り、市の発展に生かす現実的かつ前向きな視点で取り組んでいる」

 -岩国市は空母艦載機の受け入れを容認していないが、移駐の日米合意をどう受け止めているか。

 「43項目の安心・安全対策と地域振興策について、具体的に国と協議している。協議は進行中で、その先に艦載機の受け入れの是非を判断したいと市民に説明している。ただ、市街地にある厚木基地は危険と隣り合わせで、同じ米軍基地を抱えるまちとして、航空機騒音と住民の負担は視察を通じて理解している。岩国側は騒音や事件事故のリスクが増大するという不安があり、その点については厚木側に理解を願いたい」

 -米軍普天間飛行場(沖縄県)の負担軽減も、艦載機受け入れの是非の判断基準に挙げている。

 「米軍再編は大きなパッケージであり、沖縄県の負担軽減も含まれている。普天間移設の見通しが立たないうちは、艦載機の移駐のみを切り離して容認するわけにはいかない」

 -沖縄県が名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した普天間移設を巡る訴訟で、国側の勝訴が確定した。艦載機受け入れの可否の判断材料になるか。

 「司法の判断が示されたことで、これまでのように普天間移設の見通しが立っていないとは言えなくなったのではないか。移設作業が進むと考え、国と沖縄県の対応を注視している」

 -43項目の安心・安全対策の進捗率(しんちょくりつ)は8割に達した。

 「多くの市民に納得してもらう成果を引き出すのがわれわれの責務。限られた時間で実効性のある安心・安全対策を講じられるような協議をぎりぎりまで詰めていきたい」

 -米軍再編交付金(08~21年度)の総額は200億円を超える。移駐反対派は基地との「共存」でなく「依存」だと批判している。

 「有利な財源を確保し、市民サービスに充当していく手法は依存でなく、全うな行政運営の一つだ。市とすれば外交防衛政策に協力しており、再編交付金は国の正当な措置だと考えている」

 -16年12月の厚木基地騒音訴訟で最高裁は、騒音による健康被害の深刻さを指摘した。

 「厚木は滑走路周辺に住宅地があるが、岩国は滑走路の沖合移設が完了し、市街地の航空機騒音は以前より軽減されたと考える。ただ、騒音は解消されたわけでなく、住宅防音工事の拡充を要望しており、国との協議で防音対策は前進している」

 -艦載機の陸上空母離着陸訓練の恒常施設先に浮上した馬毛島(鹿児島県)案についてどう考えるか。

 「岩国周辺には建設しないと、防衛省から明確な回答を受けている。岩国市は適地について言及する立場にないが、早期に岩国市以外の場所に定めてほしい」

 -米国外初となるF35Bステルス戦闘機の配備が岩国で始まり、周辺で米軍機の事故も相次いでいる。住民の負担と不安は高まっていないか。

 「F35BはFA18戦闘攻撃機とAV8ハリアー垂直離着陸機の機種変更で、基地の機能強化ではない。騒音、安全性、環境、運用の四つに主眼を置き、16年10月にユマ基地(米アリゾナ州)を視察した。とりわけ安全性について、基地司令官や部隊から直接説明を受けた。国と米側に対し、全ての航空機の安全な運用と、市民生活に影響が生じないような配慮をしっかりと求めており、これからも求めていく」

 -集中する基地負担をどう考えるか。

 「国防や安全保障政策は国の専管事項だが、かといって基地が所在する自治体の理解と協力がなければ円滑な運用は難しい。基地が存在する自治体だけでなく、本来は日本国民が意識を高めて考えていくべきだ」


福田良彦市長
福田良彦市長


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