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伝説の夏フェス@寿町(上) 会場移転も続く伝統

社会 神奈川新聞  2016年08月20日 10:01

大勢の観客でにぎわった昨年のフリーコンサート(寿町勤労者福祉協会提供)
大勢の観客でにぎわった昨年のフリーコンサート(寿町勤労者福祉協会提供)

 横浜・寿地区で夏恒例の野外音楽イベント「横浜・寿町フリーコンサート」が12日、会場を初めて室内に移して開かれた。1979年から多彩なミュージシャンが出演し、数多くのファンを街の外からいざなってきた“伝説の夏フェス”。地区を活性化し、内外をつなぐ存在として、新たな局面を迎えている。

 日雇い労働者や、さまざまな人生模様を抱えた人たちが寝泊まりする簡易宿泊所が集積する寿地区。現在は約6500人が暮らし、単身の高齢者が増えている。盆休みをふるさとで過ごせない人たちと一緒に楽しもうと、地域手作りの「寿夏祭り」の一環としてコンサートは開かれてきた。

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 ブルーシートといす席、立ち見席を設けた100平方メートルほどの室内は、開演前から熱気が満ちていた。

 ことぶき学童保育の出身者らでつくるKotobu☆Kids(コドブキッズ)&寿音冬夏組[otonagumi]がオリジナル曲を披露。歌うアコーディオン奏者・遠峰(とおみね)あこが「野毛山節」「竹田の子守唄(うた)」、オリジナル「すっぽんぽん音頭」で盛り上げる。常連ミュージシャンの寿[kotobuki]が沖縄民謡を弾き始めると大勢が踊り始め、熱気は最高潮に。第3回から出演しているフォークシンガー南正人がギターを手に、渋い歌声で締めくくった。

 12年前から毎回訪れているホームレスの佐藤浩二さん(63)は、満足した様子だった。「フリーコンサートに来ると、夏の訪れを感じる。音楽を心ゆくまで楽しめるのはうれしいね」

 例年に比べて制約が多かった。数々の歴史を刻んだ職安前広場は、「センター」と呼ばれた寿町総合労働福祉会館の建て替え工事のために使えなくなり、寿生活館の娯楽室に会場を移したからだ。

 同じ4階にはシャワー室、炊事場、洗濯室などがあり、通常の利用者がいることから、例年の1割に当たる70人に入場を制限せざるを得なかった。


  
 「センター」はハローワーク(職業安定所)や診療所、浴場などを備え、労働者や家族の生活を支える拠点として親しまれてきた。昨年まで37回の会場となった職安前広場は、その中庭に当たる。

 舞台作りから片付けまですべてが住民やボランティアたちの手作りで、誰でも気軽に来られるように入場は無料。ミュージシャンはノーギャラで出演し、カンパを募ることで運営を続けてきた。

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 きっかけをつくったのは、前沖縄大学学長で野本三吉のペンネームで教育・福祉関連の著作も多い加藤彰彦さん(74)。30代のころに生活相談員として寿地区に住む人たちの生活をサポートする寿生活館で勤務し、労働者と住民が一緒になって暮らしを変えようと「寿夜間学校」を開いた。知人の紹介でミュージシャン喜納昌吉を招いたところ、好評だった。

 「ぶーさん」と親しまれ、1回目のコンサートから運営に参加している金子祐三さん(68)によると、草創期は喜納昌吉&チャンプルーズ、ジョニー大倉、友川カズキ、南正人らが出演し、楽しむのは地域の人たちが中心だった。しかし、90年代に若者らに人気のバンドが出演したことが転機となり、来街者が一気に増えた。

 ぶーさんの記憶の中で最も盛り上がったのは、2002年に出演したビッグバンド「渋さ知らズ」。演奏が始まると会場を埋め尽くした観客らが仮設の舞台に押し寄せるように波打った。「大勢が飛び跳ね、振動でアスファルトでできた広場の床がゆがむかと思った」と振り返る。

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