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「芸術不動産」で街活性化 横浜の防火帯建築再生

横浜みなと新聞 神奈川新聞  2017年02月06日 14:22

芸術不動産としての活用モデル事業が行われている住吉町新井ビル =横浜市中区住吉町
芸術不動産としての活用モデル事業が行われている住吉町新井ビル =横浜市中区住吉町

 戦後復興期に横浜市心部に相次いで建設された防火帯建築を、民間主導で「芸術不動産」として活用しようと、市が建物所有者とアーティストらをつなぐモデル事業がスタートした。二つの物件で試行的に再生計画が進んでおり、今後は横浜国立大学との共同研究として市内に約200棟ある防火帯建築全ての所有者に連絡を取り、活用に向けて課題を整理する。

 防火帯建築は1952年施行の耐火建築促進法(61年廃止)を受けて、70年ごろには市内に約400棟を建設。3~4階建ての店舗兼共同住宅が中心で、長方形やL字形の鉄筋コンクリート建築で火災の拡大を防ぐ狙いがあった。

 市によると、横浜市心部は関東大震災(23年)や横浜大空襲(45年)で広範囲を焼失した上、同法施行と米軍の接収解除の時期が重なったこともあり、関内地区や伊勢佐木町、吉田町などで建設が広がったという。

 だが建設から半世紀が過ぎ、建物の老朽化が進んでいる。改装に多額の費用がかかることから、3~4階の住宅部分には空き部屋も多い。横浜の戦後復興の象徴として専門家からは保全を求める声もあるが、市の歴史的建造物は戦前の建物に限っており、保全に着手しづらい状況もあるため、民間主導による活用事業を立ち上げた。

 モデル事業は市が防火帯建築の所有者に働き掛け、弁三ビル(同市中区弁天通、54年完成)の10室と、住吉町新井ビル(同市中区住吉町、61年完成)の6室で展開。定期借家契約を結んだ企業が改装後に住居やオフィスとして転貸ししたり、入居者が自己改装したりするスタイルで、昨秋ごろからアーティストや建築家らに入居を呼び掛けたところ、ほぼ全室で契約が終了したという。


設計デザイン会社を開業した池田直哉さん。「自分で改装できるのが魅力」と壁や引き戸を白く塗り上げた
設計デザイン会社を開業した池田直哉さん。「自分で改装できるのが魅力」と壁や引き戸を白く塗り上げた

 1級建築士の濱口光さん(34)は港北区に事務所を構えていたが、今春にも住吉町新井ビルに移転する。「役所が近く、建築関係の申請手続きに便利な好立地」と即決し、築55年の防火帯建築という特性も「戦後に必要に迫られて造られたという歴史に魅力を感じる」と話す。

 古谷洋平さん(40)は、東京都中野区で営んでいた建築設計スタジオを同ビルに移転した。2部屋を貫いた約80平方メートルが、管理費込みで月5万4千円と格安で「都内はもちろん横浜市内でも坪単価で5分の1程度の安さ。大きな空間を得られたのでギャラリーも備え、人が集う場所にしたい」と夢を膨らませる。

 建物を所有する新井清太郎商店不動産管理部によると、同ビル3階は20年近く空き家になっていた部屋もあるといい、担当者は「入居者が自己改装して活用してくれるのはありがたい」とモデル事業に期待を寄せる。

 市は2005年度から、アーティストやクリエーターの集積を目的に、関内外地区の空き物件を活用して活動拠点を形成する芸術不動産事業を展開している。防火帯建築について市文化観光局は「古い建物に魅力を感じる芸術家らが活用することで、関内外地区の活性化にもつなげたい」と話している。


住吉町新井ビルの改装前の住居部分=住吉町新井ビル
住吉町新井ビルの改装前の住居部分=住吉町新井ビル

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