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相模原殺傷事件 県立精神医療センター医師に聞く
支援乏しい措置入院 退院後こそ手厚く

社会 神奈川新聞  2016年07月29日 12:18

県立精神医療センター 小林桜児医師
県立精神医療センター 小林桜児医師

 相模原の障害者施設殺傷事件で逮捕された植松聖容疑者(26)は今年2月、自傷や他害の恐れがあるとして相模原市が措置入院させていた。症状がなくなったとして市は12日後に入院措置を解除、その約5カ月後に事件は起きた。退院後のフォローは十分だったのか。医療観察法病棟にも勤務経験がある県立精神医療センター(横浜市港南区)の依存症専門医・小林桜児医師(45)に聞いた。

 相模原の事件は、非常に衝撃的だった。今回の事件に関して社会の一番の関心事は「動機」(あるいは容疑者の精神病理)と「再発防止策」であろう。

 今回、警察が強制採尿しているようだが、そこで大麻が陽性となれば、大麻乱用によって精神病状態に陥った「大麻精神病」が最も疑われ、陰性であれば「妄想性障害」か「統合失調症」、あるいは「反社会性パーソナリティ障害」が疑われることになる。いずれにせよ精神鑑定は行われるだろう。

 再発防止策については、診断名が「大麻精神病」であれ、「妄想性障害」であれ、措置入院をした患者の退院後の地域処遇にもっと人手とお金をかける、ということに尽きる。

 措置入院期間が短すぎたのではないかという指摘もあるが、ではどれだけ長く入院させていれば、将来の犯行のリスクが無くなるといえるのだろうか。誰もそのようなことを明確に判断できる人はいない。


 ただ漠然と「凶悪犯罪を将来犯すリスクがある」というだけで強制入院の継続が正当化されるなら、それは予防拘禁であり、ほぼ半永久的に刑務所か精神科病院に閉じ込めるしかなくなってしまう。

 しかもそのためには莫大(ばくだい)な税金を投下して、刑務所や精神科病院を大量に増設する必要がある。本当に国民はそれで納得するのか。一度「リスクあり」と社会から烙印(らくいん)を押されると、社会復帰の道が閉ざされてしまうような予防拘禁的対応は、重大な人権侵害に他ならない。

 薬物使用者は全員警察に通報し、警察の監視下に置くべきといった極論も出てくるかもしれない。

 今回、フランスで警察のGPS(衛星利用測位システム)監視下にあった要注意人物が、教会に立てこもるテロ事件を起こした。何でも警察に委ね、何でも警察に監視させれば社会のリスクが減るかといえば、そんなことはあり得ない。たとえ刑務所に入れても、無期懲役か死刑にでもしない限り、いつかは社会に出てくる。

 刑務所に長年閉じ込めておくだけでは、薬物再乱用のリスクは減らない。刑事罰が本当に有効ならば、覚醒剤の再犯率が高いはずはない。

 2001年に大阪・池田小で起きた児童殺傷事件でも犯人の男は事件前に措置入院しており、その後に医療観察法制度が整備された。対象者1人当たり1千万~2千万円もの多額の国費と、一般精神科ではあり得ない程の大量のマンパワーが、医療観察法病棟の入院患者には提供されるようになった。


 今回の事件をきっかけに、医療観察法よりはるかに社会復帰に向けた支援が手薄だった措置入院制度や、依存症医療体制の改革改善が進むことを期待している。

 求められていることは、危険人物をただ長く入院させることでも警察に通報することでもなく、措置入院の対象となるほど自傷や他害の恐れが高まっていた精神障害者や、アルコールや薬物の助けを必要としているほど孤立していた依存症者を、退院後再び放置・孤立させず、精神保健福祉センターと保健所を中心とした在宅支援へとスムーズに移行させることだ。

 例えば措置入院患者は退院後、一定期間、保健師や看護師、精神保健福祉士の自宅訪問や精神科(依存症が疑われる場合は依存症専門外来)通院を義務付ける、などといった地域精神保健体制の整備だ。

 いずれにせよ、

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