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NPO法人フローレンス代表理事・駒崎弘樹氏
時代の正体〈363〉経済から考える待機児童問題(上) 社会的投資の側面も

時代の正体 神奈川新聞  2016年07月25日 10:28

駒崎弘樹さん
駒崎弘樹さん

 匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」をきっかけに市民運動が盛り上がりを見せた待機児童問題だが、なお抜本的な解決策は示されていない。都内で開かれたシンポジウムでは経済的な側面を中心に3人の有識者が議論を展開した。それぞれの視点から語られた課題や問題提起を紹介する連載の初回は小規模認可保育園を運営する認定NPO法人「フローレンス」の駒崎弘樹代表理事の提言をまとめた。

 自身も保育士で2児の父。子どもを預ける立場でも、預かる立場でもある。

 待機児童問題解決のため、2010年に少人数の子どもをマンションの空き部屋で預かる「おうち保育園」を立ち上げた。事業は小規模保育のモデルとして注目され、13年に小規模認可保育所が公的制度として認められるきっかけとなった(制度は15年から運用)。

 それまで日本では、定員20人以上の大規模な保育所でなければ(制度上)認可されないという時代が70年ほど続いてきた。広さや複数の出入り口が必要となるが、現実問題、基準を満たした土地を都内で確保するのは厳しい。そこで、10人程度の小規模な保育所が認められたら、都内に点在する住宅の空き部屋を保育所にできると考えた。

 厚生労働省に電話をして「なぜ認可の基準が20人なんですか」と聞いたら、「昔からそうだったんですよね」と曖昧な答えが返ってきた。そこで、ああこの制度には根拠がないな、変えてやろう、と決意した。

 マンションの一室。家を使うからおうち保育園という名前にした。定員9人のところに20人以上の応募が殺到したことから手応えを感じ、行政関係者や政治家に視察してもらったところ好反応だった。規制が変わり、6~19人を預かる小規模認可保育所が公的制度として認められることになった。15年の新制度スタートから1年間で開所したのは1655カ所。規制というものがいかに人びとの行動に影響を与えるか、よく分かる事例だった。


 理解してほしいのは、子育て支援政策というのは福祉の文脈で語られやすいが、実は競争戦略でもあるんだということ。

 子ども支援のサービスを充実させることで女性が働きやすくなり、経済成長にも影響する。つまり国内総生産(GDP)の成長にもつながっていく。他にも就学前教育は子どもの潜在能力を開花させて、よりよい労働力になることが分かりつつある。

 米国のノーベル経済学賞受賞者で経済学者のヘックマン氏が行った「ペリー実験」の結果が興味深い。

 実験では、1960年代の米国において低所得世帯の子どもに良い保育を提供した後、40年間の追跡調査を行った。質の高い保育を受けた子どもたちは、大人になってから、より所得が高く、より持ち家率が高く、より生活保護受給率が低いということが分かった。

 人生の初期状態できちんと社会的投資を行うことで、30~40年後にその人のパフォーマンスは非常に高くなる。その投資収益率たるやすさまじいもので、3・9~6・8倍。だったら社会的投資するべきで、予算をつけるべきでしょう。

 日本は対GDP比で欧州などの外国と比較しても、全然子育て支援にお金を使っていない。投資している額がすごく低い。それで「少子化だ、困った」と言っても当たり前のこと。予算を確保しないまま「一生懸命、気合を入れて少子化対策しましょう」なんて言っているのは、戦時中に圧倒的に物量がない中で「気合を入れて竹やりでB29に立ち向かえ」と言っていたのと同じだ。

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