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幻想標本作家・江本創さん「妄想しようよ」 横須賀で展覧会

カルチャー 神奈川新聞  2016年07月23日 02:00

「見る人が自由に妄想してほしい」という江本創さん=横須賀美術館
「見る人が自由に妄想してほしい」という江本創さん=横須賀美術館

 自然をテーマに創作活動を行っている美術家たちの作品と博物館が収蔵する資料を併せて展示することで、物を見ることの意味を改めて考える展覧会「自然と美術の標本展-『モノ』を『みる』からはじまる冒険」が、横須賀市鴨居の横須賀美術館で開催中だ。出品作家の一人で、架空の生き物の標本を独自の技法で制作している幻想標本作家の江本創さん(45)に、創作のきっかけや面白さについて聞いた。

 牛のような顔をしたカメ、長い尻尾に花びらのような突起のあるトカゲ-。まるで実在する生物が標本箱に入れられたようだ。中にはコウモリの翼をつけた小さな人の形をした悪魔のようなものもあり、ぎょっとさせられる。

 「この形になるのはこうだから、と進化論的なことを考えながら作ってきたが、最近はちょっと外してみよう、と。足がいっぱいあるトカゲなんてありえないでしょう」と笑う。茶褐色でいかにも干からびた生き物の肌のようだが、全て紙で作り着色したものだ。

 筑波大大学院を出て油絵や銅版画で創作活動を行っていたが、注目されず行き詰まりを感じていた。「銅版画独特の風合いは気に入っていたが、ただ大学で専攻したからやっているという感じ。この素材で作らなければ、という絶対的な理由がなかった」と振り返る。

 頭の中にあるイメージを手っ取り早く見えるようにしたい、との思いはあったが試行錯誤。ノイローゼになりかけたころ、ガンダムのプラモデルにはまった。「中学以来で、久しぶりに作ると手で形になっていくのが楽しくて仕方がない。立体って結構面白いな、と気付いた」

 不意に高校時代、美術部の部室に顧問の先生が香港土産で買ってきたトカゲの干物のようなものが置いてあったことを思い出した。「今ならあれを作れるんじゃないか、と。神が降りる瞬間があるというが、あの時がまさにそうだった」

 版画で使った紙の切れ端でこうして最初に作ったのが、胴体が赤くて翼のある竜。箱に入れて標本ラベルをつけ、酒場に集まる友人たちに「これ筑波山で死んでたんだけど」と見せると、大学の研究室で調べてもらった方がいい、地元の新聞社に知らせるべきだ、と大騒ぎに。「自分も見た、という者まで出てきて。内心おかしかった」

 この標本作品で開いた個展が好評だった。当時、こうした作品を手掛けている人はおらず、気付いたら専門家になっていたという。作り始めたのが2000年で、年間約25点を手掛けるため、現在までの作品数は400点余りに上る。

 最近では標本箱に入れた標本とその幻獣が生きていた頃の姿をとどめる状態の剥製、その様子を絵で描いた博物画をセットにしたいと考えている。

 「どういう所に住んで何を食べていたのか、どう繁殖していたのか、と見ている人が考えている時間が一番楽しいと思う。僕もあなたも妄想しようよ、と提案したい」と楽しげな表情をみせた。

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 同展では他の5組の美術家らの作品と横須賀自然・人文博物館の収蔵品、画材ラボPIGMENTが紹介する貴重な画材など約660点を展示。8月21日まで。1日休館。一般800円、高校・大学生と65歳以上600円。問い合わせは同館電話046(845)1211。


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