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「強固な殺意」認定 シッターの男に懲役26年

社会 神奈川新聞  2016年07月21日 02:00

横浜地裁
横浜地裁

 ベビーシッターとして預かった複数の乳幼児にわいせつな行為に及んだ上、横浜市磯子区の男児=当時(2)=を窒息死させるなどしたとして、殺人や強制わいせつなどの罪に問われた男(28)の裁判員裁判で、横浜地裁は20日、懲役26年(求刑無期懲役)の判決を言い渡した。片山隆夫裁判長は「シッターの立場を悪用し、親の信頼を裏切った。極めて悪質だ」と指摘した。

 弁護側は男児の死亡を風呂で溺れたことによる「事故」とし、懲役7年が相当と訴えており、殺人罪の成立が主な争点だった。

 片山裁判長は判決理由で、男児の遺体の状況から「鼻と口を少なくとも3~5分にわたり手でふさぎ続けた強固な殺意に基づく犯行」と認定。その上で、「2歳の幼さで将来を奪われたことは痛ましいというほかない。わいせつ目的で男児らを誘拐し、最終的に殺害に至ったのは、非常に強い非難に値する」と述べた。被告が起訴内容の大半を否認したことも、「真摯(しんし)に事実と向き合っておらず、反省の情は乏しい」と指弾した。

 一方で、「殺人には計画性がなく、最も重い部類に属するとはいえない」と指摘。検察側が求刑した無期懲役は「重すぎると言わざるを得ない」と判断した。

 判決によると、被告は2012年11月~14年3月、預かった20人近い乳幼児の裸を撮影したり、わいせつな行為に及んだりしたほか、同月に男児を窒息死させ、生後9カ月の弟にも重度の低血糖症の傷害を負わせるなどした。

 弁護人は判決後、「重要な部分の主張が否定された。控訴するかは本人がよく考えて決めること」と話した。

「従事者の質向上を」裁判員




 預かった乳幼児にわいせつ行為を繰り返し、殺害にまで至った被告の犯行に向き合った裁判員らは、1カ月以上に及んだ公判への不安とともに、「無資格で登録できる抜け道がもたらした結果」とベビーシッター業務の在り方にも思いを巡らせていた。

 判決後に会見した男女7人の多くは、無資格の被告が仲介サイトを通じて子どもを預かっていた点を疑問視。30代の男性は「本気でシッターをやっている人も疑いの目で見られてしまった」とする一方、インターネットを介した「偶然の一致」がもたらす危険性を指摘した。

 同年代の女性も「(サイトの)管理者が責任を持って対応していれば、こうならなかったのでは」。補充裁判員の女性は「保育士不足とも言われているが、人数を増やすだけではだめではないか」と、保育従事者の質を高める必要性を訴えた。

「2歳の尊い命」重さは-遺族、刑の軽さに落胆




 「言い渡された刑は、思っていたよりも軽くてとても残念です」。わずか2歳の命を絶たれた男児の母親(24)は判決後にコメントを寄せ、苦しい胸の内を明かした。

 初公判を前に「あの子の最期を少しでも知りたい」と、最愛の存在が奪われた事件の裁判に臨む決意を語っていた母親。公判では「男児は目を離した際、浴槽内で溺れた」などとする被告の主張にも耐えてきた。

 判決は被告の「不合理な弁解」を退けて殺意を認定し、男児の最期にも言及。「体重が100キロを超える被告が2歳児の鼻や口を手でふさぎ続けた」「体格差は歴然としており、逃げ場のない密室で抵抗は不可能に近かった」-。被告が語らなかった動機は不明のままだが、「男児の対応次第で突発的に殺意を抱くことはある」とも指摘した。

 「被告の口からは何も真実を聞くことができませんでしたが、判決の中で長男が何をされたのか、どのように亡くなったのかということを聞くことができたと思っています」

 コメントではこうも打ち明けたものの、「命をもって償ってほしい」と訴えてきた母親にとって、量刑の落差は大きかった。

 「『2歳の尊い命』の重さを本当に考えてくださったのかと思ってしまいますし、子どもに対する性的な犯罪は重い刑にしないとなくなっていかないのではとも思います。検察庁には控訴していただきたいと思っています」


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