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子ども少なく地方創生実感なし 人口減に歯止め利かぬ山北町

選挙 神奈川新聞  2016年06月25日 10:51

新東名高速道路「山北スマートインターチェンジ(仮称)」の建設予定地付近=24日、山北町
新東名高速道路「山北スマートインターチェンジ(仮称)」の建設予定地付近=24日、山北町

 「自然が豊かで、子どもたちが暮らす茅ケ崎や千葉から遠くない場所にと思って」

 東京都内に勤める川崎市幸区の会社員矢永雅治さん(60)が移住先の候補地に選んだのは、静岡県境の山北町。定住対策に力を入れる町が古民家を改修して整備した「ホタルの家」で、2週間限定の「試し暮らし」の第1号となった。24日までのお試し期間で「山登りが好きなので、山に近いのは魅力」と環境面のメリットを実感した一方、こんな本音も口にする。「実際に移住するかどうかは、すぐには決められない。将来のことを考えれば、医療機関の有無などが判断材料になる」

東西で異なる現実


 日本全体が人口減に転じる中、なお住民が増え続ける150万都市・川崎と、ピークだった半世紀前と比べ人口が3分の2の1万1千人に減った山北。他の地域から人々を吸い寄せる一極集中の弊害が指摘される東京圏にありながら、神奈川県内の足元に広がる現実は東西で大きく異なる。

 「近年の定住促進の取り組みで、(転出者が転入者を上回る)社会減の数は減少傾向にある」。山北町はそう分析し、人口減をいかに食い止めるかに腐心するが、大学や専門学校が町内にないため、進学を契機とした10~20代の流出に歯止めがかからない。

 少しでも明るい将来像を描くため、町が昨年まとめた「人口ビジョン」にも、対策の難しさがにじむ。「出生数の増加とともに、若年層の流出をいかに抑えるか、いかに山北町に戻ってきてもらうかが課題」

 7歳と3歳の子を持つ主婦岡田明日美さん(36)はUターン組の一人だ。2年前、緑に囲まれた環境で子育てがしたいと平塚市内から両親のいる山北に転居したものの、住民の少なさを肌で感じる日々が続く。「子どもが少ないので、親が遊び相手になるしかない。このままでは、子どもが大人になったときに人間関係でつまずかないだろうか」

 にぎわいを取り戻すには「若い世代に住んでもらうしかない」が、「その実現は難しく、高齢者も支えることができないという悪循環に陥っている」ように思えてならない。だから将来への不安を拭えず、安倍政権が推し進める地方創生の取り組みを「実感することはない」という。

新東名に期待の一方で…


 定住対策に生かそうと町が転出者に行ったアンケートでは、住みにくかった点として9割以上が「交通の便が悪い」点を挙げた。その改善につながる新東名高速道路の整備には大きな期待が寄せられているが、地域にもたらすのはプラスの効果ばかりではない。

 東京方面のみの「山北スマートインターチェンジ(仮称)」が近くに整備予定の清水地区では、用地取得の関係で複数の世帯が転居を余儀なくされる。地元の清水連合自治会長の尾崎政男さん(72)は「せめて町内にとどまってくれればと期待していたが、ほとんどが町外に出て行ってしまうようだ」と嘆く。

 児童・生徒減に伴う学校統廃合で、清水地区からは2014年春に中学校が、昨年3月には小学校もなくなった。「学校が少ないと、転入しようと思う若い世代は増えないのではないか。このままでは、急な下り坂を転がるように人口が減っていきかねない」との懸念が強い。

 毎月の町の広報紙が配られると、最初に必ず人口データの欄を見るという尾崎さんは言う。「住民が顔を合わせる機会を増やすことが大切と考え、地元で運動会などを開いているし、町も懸命に定住促進に取り組んでいるけれど、抜本的な対策にはなっていない。『地方創生』が今回の選挙で注目されているようには思えないが、本当に何とかしてほしい」


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