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憲法考
時代の正体〈342〉危うい緊急事態条項(上) 「例外」は常態化する

時代の正体 神奈川新聞  2016年06月23日 09:32

ドイツ軍がポーランドに侵攻し第2次世界大戦が始まった1939年9月1日、ベルリンで演説するヒトラー総統と敬礼する議員
ドイツ軍がポーランドに侵攻し第2次世界大戦が始まった1939年9月1日、ベルリンで演説するヒトラー総統と敬礼する議員

 緊急事態条項を入り口とした改憲論は、危うい。災害やテロを口実にした権力の集中はやがて、なし崩しに拡大解釈され、経済対策にも国会運営にさえも適用されることになる。杞憂(きゆう)ではない。国内外で既に経験された「歴史的事実」なのだから。

法治の無効化


 「緊急事態が永続化している」

 政治思想史が専門の慶応大(横浜市港北区)の片山杜秀教授は、現代の国際社会をそう表現する。国家や社会の安寧秩序を維持するためには、人権の制限も許される。そういう考え方が、より多くの市民に浸透したというのだ。

 言い換えるならば「終わりなき非日常」。その大きな契機は2001年9月11日の米中枢同時テロだったといえる。

 「個人の自由が大事だ、という市民社会の価値観は否定しない。とはいえ、もしもテロが起きたら大変でしょう、だから人権の制限も必要でしょう、と一時的措置として始まりましたが、もう15年も『テロとの戦い』が続いています」

 テロ対策のため米捜査当局が行う通信傍受や個人情報の収集、あるいは日本の身近な例でいえば、街じゅうの監視カメラで個人の行動を特定することに対する「無意識」にも通ずる。

 9・11テロの2カ月後、米大統領は「軍事命令」を出し、テロ活動の「疑い」のある外国人の拘束を認めた。その意味を、イタリアの政治思想史家ジョルジョ・アガンベンは2003年の著書「例外状態」で次のように言い表す。

 「一個人についてのいかなる法的規定をも根こそぎ無効化し、そうすることで法的に名指すことも分類することも不可能な存在を生み出した」。捕らえられた外国人は犯罪容疑者でもなければ被告人でも囚人でも、戦争捕虜でもない、法に規定されない存在。そこに法治はない、と。

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