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連帯訴えヨットでビキニへ 被ばく島々巡り2カ月航海

社会 神奈川新聞  2016年06月13日 10:47

マーシャル諸島に向けて出航した武本さん(後列右から2人目)らクルー =葉山新港
マーシャル諸島に向けて出航した武本さん(後列右から2人目)らクルー =葉山新港

 62年前に米国の核実験が実施された太平洋のマーシャル諸島を目指して、プロダイバーの武本匡弘さん(60)=葉山町堀内=ら有志が7日、葉山新港から出航した。同諸島のビキニ環礁で実施された水爆実験の被害を受けた島々を、2カ月かけてヨットで巡る。伝統の船で海を渡ってきた旧島民たちに、固有の文化の大切さを伝える連帯のメッセージを届けるため、総距離約5600キロの旅に向かう。

 武本さんは日本サンゴ礁学会員でもある。9年前にサンゴの潜水調査で同諸島を訪れた経験もあり、島々の歴史にも関心を深めていった。1年半前から計画を練り始め、メンバーを公募した。

 航海には延べ9人が参加する。小笠原やグアムを経て、放射能降下物が降ったロンゲラップ環礁の旧島民が疎開しているマーシャル諸島共和国の首都マジュロやメジャト島を訪ねる。ビキニ環礁なども巡る。

 「帰りたくても帰れない」。旧島民の苦しみは、東京電力福島第1原発事故の影響で帰還できない福島の現状と重なる。「互いに厳しい体験をしたからこそ、大変な人たちの気持ちも分かる」

 武本さんの旅には、島民に向けた「素晴らしい伝統文化を見直してほしい」との思いも込められた。

 現地には帆船「マーシャル・カヌー」が伝わる。材料の木材を切る際には儀式を開く神聖な船で、星を頼りに大海を渡った時代から3千年以上の歴史を持つ。今も物資運搬や漁などで使われるが、数は減った。

 便利なエンジン付きボートは、高価な上に故障も付きものだ。だが疎開で首都に移住した旧島民の孫世代に当たる若者たちは都会の生活に慣れ、故郷の島は遠い存在になりつつある。

 「カヌーは偉大な航海者である彼らの象徴。伝統的な技法を復活させたい。私たちが環礁内の島を行き来して実証し、支援の形を提案できれば」。武本さんは、「人材も育つし、雇用も増えるかもしれない」と、伝統の船が無形の財産として残ることに期待している。

◆ビキニ原水爆実験 1954年に米軍がマーシャル諸島で実施した一連の実験のうち、3月1日のビキニ環礁での実験「ブラボー」。破壊力は広島に投下された原爆の約千倍ともいわれる。爆心地から約180キロのロンゲラップ島では放射性降下物が降り注ぎ、島民は故郷を追われた。子や孫の世代にも先天性脳障害や奇形などの後遺症が現れ、今も島民らは帰島を果たせていない。



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