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川崎中1殺害
「切り付けてない」 19歳少年改めて無罪主張

社会 神奈川新聞  2016年05月24日 09:44

 川崎市立中学1年の男子生徒殺害事件で、傷害致死罪に問われた元職人の少年(19)は23日、横浜地裁の裁判員裁判で「『やめておけ』と(主犯格の少年の暴行を)口で止めた」と事件当時の状況を語った。3日目の公判では被告人質問が行われ、被告は改めて無罪を主張。意見陳述に立った遺族は「あの場にいた3人を許さない」と声を震わせた。

 被告は多摩川河川敷で中学1年の男子生徒=当時(13)=に対し、ほかの少年2人と共謀し、首をカッターナイフで切り付けたり顔面をコンクリートに打ち付けたりして死亡させた、として起訴されている。

 被告人質問で、被告は主犯格の少年(19)=殺人などの罪で不定期刑確定=が河川敷で男子生徒の左頬をカッターで切り付け始めたとし、「まじでやるのか、やりすぎと思った」と説明。また、主犯格に名前を呼ばれ「(被告も)やってよ」と刃が出たままのカッターを差し出されたものの「無理、できない」と断ったとし、「絶対、切り付けたりはしていないです」と、男子生徒への暴行を否定した。

 遺族に対しては、「警察にも通報できたし、救急車も呼べた。正しいことができなかったことにすごく後悔しています」と話した。24日は論告求刑公判が行われる。

「人の心がない」 男子生徒の両親



 この日、男子生徒の両親が被害者参加制度を利用して意見陳述し、父親は「息子は本当なら15歳、中学3年生になっているはずだった。私の中の息子は中学1年生で止まったままです」と涙ながらに語った。

 直前の被告人質問で被告が「その場にいただけで、自分は何もしていない」と主張したことに対し、「息のある息子を放置したのは事実。通報していれば助かったかもしれない。あの場にいた3人を絶対に許さない」と語気を強めた。

 「(被告には)人としての心がないから、何を言っても無駄だと思います」。母親は時折声を詰まらせ、むせび泣きながら意見陳述書を読み上げた。「事件のことを聞かれても懸命に思い出そうとせず、全く悪いことをしたと思っているようには聞こえなかった」と批判し、「息子に会いたい。声が聞きたい。お願いだから、息子を返して」と訴えた。

「うそつかないで」 主犯格の証言に反発




 「うそをつかないでほしい」。被告もカッターナイフで男子生徒を切り付けたと主張する主犯格の証言に被告はこう抗弁し、「うそ」をつかれた訳について続けた。「自分を巻き込みたいと思ったからじゃないですか」

 事件に巻き込む理由は? 裁判官に問われると、「『切って』って頼んでくるぐらいだから、そうなんじゃないですかね」。

 中学から同窓という2人。被告を「親友」と呼ぶ主犯格に対し、「特別仲がいいとは思っていなかった」と切り捨てた。

 淡々と応じる被告に、検察官や裁判官は事件当夜の細かな言動を繰り返し確認した。男子生徒を切り付ける主犯格を「やめておけ」と注意したものの、そばで喫煙しながら携帯電話を操作していたという。「自分も切り付けられると思った」から身を呈して制止しなかったと語ったが、主犯格が共犯の無職少年(18)に暴行を強要した場面では、「肩か腕をつかんで」仲裁している。隔たる対応の理由は「特にありません」と述べた。

 過去の発言との矛盾も指摘された。被告は少年審判で凶器がカッターか識別できなかったと主張したというが、この日は「紫色のカッター」を見極められたと回答。「自分のカッターが使われていたので、自分が切ったと思われたくなくて。(少年審判で)言わなくていいんじゃないかと思いました」と説明した。

 事件前、焼酎のお茶割りを「6~7杯」(主犯格の証言)飲んでおり、主犯格から差し出されたカッターを「こけたふり」をして拒んだという。「普通にできないと言ってもやらされると思い、酔ったふりをしました」と回想。真冬の多摩川を泳がされた男子生徒に、「泳げば逃げられるんじゃないか」と進言したとも話した。


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