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点検・マイナス金利(中) 慎重、堅実な消費者

経済 神奈川新聞  2016年05月20日 15:03

マイナス金利の導入以降、入会希望者が増えている高島屋の「友の会」=横浜市西区の横浜高島屋
マイナス金利の導入以降、入会希望者が増えている高島屋の「友の会」=横浜市西区の横浜高島屋

 「マイナスといわれると『経済はよくなるの?』という懸念が心理的にある」。「マイナス金利」という言葉への素朴な印象を、県内の信金幹部はこう語る。不安の中で、様子をうかがおう、と思う心情も理解できる。「どちらかといえば、財布のひもは固くなるのでは。だから預金も増えているのか」-。

 県内の10の銀行、信用金庫では、2月16日のマイナス金利導入を受け、普通預金や定期預金の金利を引き下げた。導入直前、複数の県内金融機関は「他金融機関の動向も見て決める」と語り、実際、たとえば普通預金の金利はそれまでの0・02%から0・001%へと一律に下がった。

 だが、利率は下がっても各県内金融機関の預金残高は例年に比べて大きな変動はないか、むしろ少し増えている。そこに垣間見えるのは、慎重かつ堅実にふるまう消費者の姿だ。


預金より「友の会」
 その行動は、マイナス金利導入が決まった直後から始まった。高島屋では全国18店舗で「友の会」の新規入会件数が急激に伸びた。伸び率は、決定直後の2月が前年同月比2・4倍、3月が3・3倍、4月が2倍。「過去10年で1番の伸び」と同社担当者は明かす。

 友の会は毎月5千~5万円を積み立てると、1年後に1カ月分がボーナスとして加わった「お買い物カード」がもらえる仕組みだ。利率にして、約8%。2月以降は多くて1日に約1千件の申し込みがあり、県内でも横浜店・港南台店ともに2月以降の入会件数が増えている。従来は60代の利用者が最多だが、30代など若い世代の入会が伸びているのも特徴だ。

 「『預金をするよりも友の会に入った方がお得』と考える顧客が増加している」と担当者。導入後の報道で「友の会がお得」という認識が広まったこともある。思わぬマイナス金利の副産物に「顧客の固定化につながる」と期待を示す。


家庭用金庫も人気
 金庫の人気も高まっている。県内13店舗をはじめ、全国にホームセンターを運営するケーヨー(千葉市)によると、2~4月の金庫の売上高は前年同期比約2倍で推移した。特に導入直後である2月22日の週の伸びがよかったという。

 人気は家庭向けの重さ30~50キログラムのもので、価格帯は3万円前後。手提げ金庫はA4ファイルが入るサイズが好調で、商品についての問い合わせも前年に比べて増加しているという。

 金庫の特設コーナーの設置やオンラインストアの取り扱い品目増にも取り組む同社。「マイナンバー制度導入による個人情報管理ニーズの高まりに加え、マイナス金利での預金金利の低下を受け、自宅などで現金を保管するタンス預金の需要が広がっている」と分析している。生活雑貨を扱うそごう横浜店7階の「横浜ロフト」でも、昨年2月は1点も売れなかった手提げ金庫が今年は3点売れた。


伸び悩む高額消費
 一方、百貨店の売り上げには陰りが見えている。そごう横浜店は、3月の売上高が前年同期比93・3%、4月は速報値で97・9%と、伸び悩む。食品や化粧品といった「必要購買型」商品は堅調に推移しているが、宝飾や時計などの高額品は商談はあるものの購買決定が前年比で減少している。「株価の低迷も相まって、富裕層をはじめとする個人消費が落ちている」と担当者は説明する。

 マイナス金利政策ではローン金利の低下による住宅投資の活性化も期待されているが、それに付随する家具などの購入も現状では伸びていない。家具やインテリアの販売を手掛ける「家具の大正堂」(相模原市南区)の担当者は「現時点では(客足や売り上げ、株価などで)良い方向に表れている状況はない」と話す。

 そもそも個人消費は世界経済の動向や資材価格などさまざまな要素にも左右され、金融政策だけで動かせるものではない。マイナス金利政策が住宅投資に効果があるとは言い切れず、あったとしても家具の需要増までには一定のタイムラグが必要だ。効果がどこまであるか、いつ表れるかはっきりとせず、「雲をつかむような話」と担当者。市場金利などは変化しているが、「本当に(家具購入のような)日常生活にまで反映されるのか」。疑問は尽きず、過度な期待もしない。


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