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安保法差し止め「却下を」 違憲訴訟地裁初弁論

社会 神奈川新聞  2017年01月27日 02:00

横断幕を手に横浜地裁へ向かう原告ら=26日午後2時20分ごろ、横浜市中区
横断幕を手に横浜地裁へ向かう原告ら=26日午後2時20分ごろ、横浜市中区

 安全保障関連法は違憲として県民ら254人が国を相手取り、安保関連法による集団的自衛権の行使差し止めと1人当たり10万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が26日、横浜地裁(石橋俊一裁判長)で開かれた。国側は、差し止め請求に対して「民事訴訟手続きでできない訴えで不適法」として却下を、損害賠償請求については棄却をそれぞれ求めた。

 原告側が差し止めを求めたのは、安保関連法に基づく自衛隊の防衛出動や後方支援活動、国連平和維持活動(PKO)時の駆け付け警護など4点。一連の活動を規定した安保関連法の制定で、日本が戦争当事国となる可能性が高まり、原告住民らの平和裏に暮らす権利が侵害されたと訴えている。

 また、国民投票などの正式な改憲手続きを経ずに憲法9条を実質的に改変され、主権者が有する改憲決定権が踏みにじられたとも主張している。

 これに対し国側は答弁書で、安保関連法に基づく自衛隊の出動命令などを「首相らの職務の一つで行政権の行使そのもの」と説明。公権力行使の適否を問う行政訴訟ではなく、民事訴訟で差し止め請求が行われたことに「民事上の訴えとして不適法」とし、門前払いを求めた。

 賠償請求についても、原告が主張する権利を「極めてあいまいなもの」「漠然とした不安感の域を超えない」などと指摘、救済すべき侵害はないとした。

 この日の口頭弁論では、原告3人が意見陳述に臨んだ。中西新太郎横浜市立大名誉教授は「『国民の安全を守る』との名目で強行された安保関連法は、逆に守るべき市民を危険にさらす愚を犯している。廃止こそが平和に生きる権利を保障する方策」と力を込めた。

暴走阻止、司法に託す





 国会前で盛り上がった反安保のうねりが県内でも法廷に持ち込まれ、本格的な審理が26日始まった。司法に望みを託した原告らは「国の暴走の防壁に」と期待。弁護団は抽象的な違憲確認訴訟に終わらせないことを今後の留意点として挙げつつ、「安保関連法で県民にどんな権利侵害が実際に生じているのか、分厚く立証していきたい」と語る。

 弁護団が作成した訴状には、さまざまな立場の原告が登場し、心情を打ち明ける場面が盛り込まれている。横浜大空襲の経験者や旧陸海軍の元兵士、厚木基地・横須賀基地周辺の居住者などその数は計10人。

 「空襲の恐怖は二度と味わいたくない。安保関連法で空襲のことが思い出された」「基地は真っ先に敵国の攻撃対象となり、周辺住民も巻き込まれる危険性が高い」

 自らの体験や知識、置かれた状況を踏まえ、安保関連法への不安や被る権利侵害を切実に訴えた。

 こうした訴状の記載は、提訴前に弁護団から原告を広く公募するという、通常とは真逆の経緯と無関係ではない。「安保関連法でどんな影響が出るのか、生活や暮らしに落とし込んで主張していきたい」と関守麻紀子事務局長。呼び掛けに応じた254人の主張を積み上げ、多角的な視点から被害を立証する手始めとして書き上げた。

 弁護団の福田護共同代表は「安保関連法でどんな権利が奪われ、それが差し止めに足る被害だと認定できないと勝てない」と見定める。被害の現れ方や捉え方が人によって多種多様な点が今回の訴訟の特徴でもあり、「今後も(意見陳述や本人尋問を通じて)原告の思いを丁寧に裁判所に伝えていきたい」とした上で、こう意気込む。

 「本来の手続きを経ない“改憲クーデター”が起こされたわけだが、クーデターの完成は司法が(行政府と立法府を)追認した時。何としても阻止したい」

平和、次世代に継ぐ




 安保関連法違憲訴訟の第1回口頭弁論を受け、原告住民らは26日夕、関内ホール(横浜市中区住吉町)で報告集会と訴訟団結成総会を開いた。「平和な社会を次世代に引き継ぐ責任がある」とし、全国各地の運動や訴訟と連携していく必要性を確認した。

 原告住民や弁護団、支援者ら約260人が参加。訴訟団共同代表の岡田尚弁護士は「司法は歯止めになるのか。判決によってはお墨付きを与えることにもなりかねない。圧倒的な国民の声を裁判所に届けなければいけない」と訴えた。

 弁護団の一員で法学館憲法研究所所長の伊藤真弁護士が「憲法は自由で平和な生活を送るためのインフラ」と指摘。「政治を司法からただすには市民の力が不可欠だ。次世代に引き継ぐために最後まで戦い抜こう」などと呼び掛けた。

 この日、法廷で意見陳述した原告の藤原律子さんは「小さな力も積み重ねれば大きな力になる。平和への強い気持ちを胸に、戦時に逆戻りしないように押し返したい」と強調した。

 総会では原告側からの共同代表に、中西新太郎・横浜市立大名誉教授ら4人を選んだ。


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