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噴火警戒 箱根山との共生(下)リスク回避 活発化の減収補填

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神奈川新聞  2005年11月27日公開  

今年2月、箱根山のリスク共生をテーマにまとめた提案を発表する横浜国立大の学生ら(同大提供)
今年2月、箱根山のリスク共生をテーマにまとめた提案を発表する横浜国立大の学生ら(同大提供)

 「火山デリバティブ」。箱根町に拠点を置く事業者にとって、活火山の箱根山と共生を図る上で欠かせない備えの新たなアイデアが注目を集めている。

 考案したのは、横浜国立大経営学部4年、奈良澤はる菜さん(22)たちのチームだ。研究テーマでもある金融派生商品としての提案だが、火山活動の活発化に伴う事業活動の停止や観光客の落ち込みに伴う減収を補填(ほてん)する保険に近い性格を持つ。

 奈良澤さんがその仕組みを説明する。「事業者は1口150円から加入(購入)できる。加入していれば、火山性地震が1日10回以上発生した日があった場合に、その4日目から1日につき1万5千円の保険金が支払われる」

 満期は1カ月。事業規模が大きければ何口でも加入でき、その分、十分な補償を得られるようにした。さらに、地震回数という客観的な指標に基づいて金銭がやりとりされるため、損害程度の判定が不要な点が大きな特徴だ。

 検討を始めたのは、火山活動がピークを過ぎた昨秋。昨年8月に箱根を訪ねた経営学部長の森田洋教授(53)が地元の苦境を知り、リスク共生をテーマとした学内のコンテストを発案したのがきっかけだった。

 手を挙げたのは、経営や経済、交通などが専門の学生による五つのチーム。火山と向き合う上で箱根に何が足りないのか、どうすれば火山活動の影響を減らせるか、額を付き合わせた。町の担当者や観光専門家らのレクチャーを受け、火山としての認知度に関する学内アンケートを実施したチームもある。

 火山観光地としてガイド機能の強化を図るマイスター制度の導入、大涌谷を通る箱根ロープウェイを中心とした周遊コースが寸断された場合に備えた魅力的なバスルートの開拓と強羅や仙石原の役割強化、箱根を舞台とするアニメとタイアップした観光小冊子やクイズキャンペーン-。

 多様な着想で生まれたリスク共生のアイデアは地元の観光関係者らによって審査され、火山デリバティブが僅差で優勝を果たす。県温泉地学研究所にも助言を求め、保険金の支払い対象となる火山性地震を「大涌谷に近い神山を中心とした半径2キロ以内の範囲で、深さ10キロより浅いところで起きた場合」に限った提案は現実的な内容で、実現への期待値も高かった。

 ただ、箱根山の活動が実際に活発化すると、保険会社や投資家側に多額の支払いリスクが生じてしまうため、森田教授は「箱根の事業者だけを対象とする形では導入が難しい」と課題を指摘。一方で「風評被害にも対応できる。他の火山地域と連携して全国的な仕組みにすれば、道は開ける」と青写真を描く。

 「火山性地震を指標とするデリバティブは例がなく難しいとも思ったが、徐々に必要なデータや情報が集まり、役に立てるという実感に変わった」と奈良澤さん。審査などに関わった箱根強羅観光協会専務理事の田村洋一さん(50)も「火山地域で事業を営む人々が意識を統一できれば、助け合える仕組みになる」と期待を寄せる。

 横浜国大のメンバーは5月中にも、コンテストの報告書を町に提出。リスク共生の具体化へ一歩を踏み出す。


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