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注目される国際連帯税 「航空券」導入 議連も強調

政治行政 神奈川新聞  2016年05月05日 10:46

参院議員会館で開かれた国際連帯税導入を訴える院内学習会=20日
参院議員会館で開かれた国際連帯税導入を訴える院内学習会=20日

 貧困、格差、環境問題など、深刻化する地球規模課題を解決するために、グローバルな資産や国境を越えた活動に課税する国際連帯税の導入を求める声が高まっている。超党派の「国際連帯税創設を求める議員連盟」(衛藤征士郎会長)は、日本での第1弾として世界14カ国が実施している航空券連帯税の導入を提唱。26、27日のG7伊勢志摩サミットで日本の国際貢献策として打ち出すべきだと訴えている。 

 4月20日、参院議員会館で国際連帯税についての院内学習会が開かれた。参加したのは国会議員ら約60人。議連と連携し、国際連帯税の意義や制度設計などを研究してきた研究者、NGO代表者らでつくる「グローバル連帯税推進協議会」(座長・寺島実郎多摩大学長)が主催した。協議会には、外務、財務両省の職員もオブザーバーとして参加。熱心な検討を重ね、2015年12月には、航空券連帯税、金融取引税などの導入に段階的に取り組むよう求めた最終報告書を発表している。

 学習会で寺島座長は「国境を越えてヒト・モノ・カネ・技術・情報が移動するグローバル化には光と影がある。地球温暖化など環境問題の深刻化、地球全体のGDP規模の4倍を超えたと推定される金融取引(マネーゲーム)によって生じた格差と貧困、航空機による人の移動に伴うエボラ出血熱、デング熱など熱帯感染症の拡散の危険など、影の問題を制御する知恵が問われている。こうしたグローバルな政策課題に立ち向かうため財源の確保が必要だ」と、国際連帯税導入の必要性を訴えた。

 日本での導入では「やれるところからやる段階的アプローチが必要。まず、日本一国で実施できる航空券連帯税の導入に取り組むべきだ」とした。その後、欧州連合(EU)10カ国が計画している欧州金融取引税の導入に合わせ、日本においても広範な金融商品の取引に対し、極めて低い税率を課す金融取引税を導入すべきだとした。

 航空券連帯税について委員の上村雄彦横浜市大教授が解説。「フランスや隣国の韓国も実施している。国際線ファースト・ビジネスクラスに5千円、エコノミークラスに500円とした場合、2015年の税収見込みは約408億円になる」とし、使途については「80%は国際機関を通して世界の感染症対策に提供、残り20%は国内の感染症対策とし、遅れている地方空港の防護体制などを強化する方法もある」とした。

 議連の衛藤会長(自民)は「理論武装は十分に行われた。後は政治決断だ。G7伊勢志摩サミットに向け連休明けに、国際連帯税の創設を官邸に申し入れる。サミットの議題の一つは感染症対策になる。G7と世界銀行で途上国向けに基金をつくるという動きもあり、その資金に国際連帯税が考えられる」と述べ、強い意欲をみせた。

 航空券連帯税について、全日空、日本航空の理解を得る作業を議連として行っていくとし、藤田幸久会長代行(民進)も「国会でも取り組みを行い、国際連帯税創設に向けた国民運動につなげたい」などと決意を示した。

「租税回避 防止が鍵」 グローバル連帯税推進協議会最終報告書



 グローバル連帯税推進協議会の最終報告書は、地球規模の課題として貧困・開発、気候変動(地球温暖化)、生物多様性、大規模災害、平和構築、金融・経済危機問題、格差・不平等などを挙げ、解決には年間約1兆810億ドル(約130兆円)の資金が必要だと推計した。

 しかし、世界の政府開発援助(ODA)の総額は2013年で約1345億ドル(約16兆円)にすぎない。「巨額の資金を調達するには公的資金、民間資金を合わせても間に合わない。第三の財源として、グローバルな資産や国境を越える活動に課税する国際連帯税が必要。地球社会を一つの国とみなし、地球規模で税制を敷くことが求められる」とした。

 国際連帯税の具体的方法としては金融取引税、グローバル通貨取引税、タックス・ヘイブン利用税、多国籍企業税、グローバル電子商取引連帯税、グローバル累進資産課税などのほか、地球炭素税、天然資源税、武器取引税、航空券連帯税などを挙げた。

 これらを合計すると、理論上、年間約2兆4400億ドル(約293兆円)の税収が得られるとした。これは、地球規模課題の解決に必要な資金の2倍以上にあたる。国際連帯税の創設が有効なゆえんだ。

 中でも中心的課題は金融部門だ。実体経済と遊離した「ギャンブル経済」の膨張が、通貨・金融危機を引き起こし、世界経済や人々の暮らしに大きなダメージを与えている。金融取引税などによって、その責任を問い、マイナスの影響を抑制することが欠かせないとした。

 また、「パナマ文書」であらためて問題性が指摘された「タックス・ヘイブン」(租税回避地)には、21~32兆ドル(2520~3840兆円)の資金が隠匿され、これに通常の課税が行われれば、年間1900~2800億ドル(22兆8千億円~33兆6千億円)の税収が得られるとの試算も紹介。各国租税当局間の自動的情報交換などの取り組みで、この巨額かつ不透明な資金の流れを透明にし、租税回避を防ぐことも大きな課題だとした。

 日本での国際連帯税導入では、国民の理解を得るために段階的アプローチを提案した。まず航空券連帯税を導入。その後、EU10カ国が合意している欧州金融取引税の導入に合わせ、日本も金融取引税を導入すべきだとした。

 金融取引税は当初、有価証券取引に0・1%、デリバティブ取引に0・01%を課税するなどのEU方式をほぼそのまま導入(税収約8千億円)。その後、金融取引の0・01%、金融機関債務残高の0・1%に課税するなどの日本独自案(同最大約3兆円)を世界に提言し、国際協調を図りながら実施に移すべきだとしている。


上村雄彦横浜市大教授、金子文夫同大名誉教授らグロバール連帯税推進協議会の委員らが執筆した「世界の富を再分配する30の方法 グローバル・タックスが世界を変える」(1512円、合同出版)が刊行された。深刻化する地球規模課題と、国際連帯税の仕組みが分かりやすく解説されている
上村雄彦横浜市大教授、金子文夫同大名誉教授らグロバール連帯税推進協議会の委員らが執筆した「世界の富を再分配する30の方法 グローバル・タックスが世界を変える」(1512円、合同出版)が刊行された。深刻化する地球規模課題と、国際連帯税の仕組みが分かりやすく解説されている

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