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私の分身、世界を見て ぬいぐるみが「外出代行」

社会 神奈川新聞  2016年05月02日 11:51

ぬいぐるみを使って交流の輪を広げている鈴鹿さん(右端)=鈴鹿さん提供
ぬいぐるみを使って交流の輪を広げている鈴鹿さん(右端)=鈴鹿さん提供

 外出が困難な車いす利用者らが、ぬいぐるみの“お出かけ”を通じて交流の輪を広げる「マスコット活動」が話題を呼んでいる。県内では、小児がん患者の支援会場にぬいぐるみが駆け付けて激励メッセージを代読、新たな居場所づくりのヒントになると活動をサポートする動きも出始めた。距離を超えて空間を共有し、思い出を分かち合う「新しいつながりの形」への共感が広がりそうだ。

 マスコット活動の始まりは、大阪府吹田市の鈴鹿典子さん(39)が、亡くなった友人の追悼ライブへの参加を願ったのがきっかけ。「大切な友達だったので気持ちだけでも参加したかった」と、会場がある千葉県柏市のボランティアセンターに連絡して代理参加を依頼。担当者と打ち合わせを進めるうちに、「分身」のぬいぐるみが参加する方法を思い付いた。

 会場では、事情に共感した来場者が一緒に写真を撮影し、ノートにメッセージを書き込んでくれた。「ライブの盛り上がりが伝わってきて、その場にいるような感覚になれた。温かいサポートによって生きる勇気をもらえた」と鈴鹿さん。その後も遠方での結婚式などさまざまな催しで、ぬいぐるみとノートが紡ぐ思い出を共有している。

 鈴鹿さんが「代行旅行」に頼らざるを得ないのは、16年前の不幸な出来事が人生を変えたからだ。市販の風邪薬を服用してアナフィラキシーショックを起こし、全身にまひが残った。苦境に向き合いながらも、医薬品被害者としての声を届けようと、市民団体の活動を通じて医療環境の改善を訴え続けている。


ぬいぐるみを掲げ、鈴鹿さんのメッセージを伝える細木さん=昨年12月13日、都内
ぬいぐるみを掲げ、鈴鹿さんのメッセージを伝える細木さん=昨年12月13日、都内


 昨年12月には、小児がん経験者や家族らでつくる市民団体「みらいっぽ」の患者支援イベントに“参加”。藤沢市の女声合唱団「きらきら湘南」のビデオメッセージに譜面台上で合唱するぬいぐるみが映し出され、指導者の細木佳子さんが鈴鹿さんのメッセージを代読した。「その場に行くことはできませんが、一緒に歌うことで応援できるのではないかと考えました。私は小児がん患者を応援したいです」

 みらいっぽの関口理恵さん(43)は「小児がん患者も居場所がなくなることがあります。こんな形で自分の存在がみんなの中にあったらすてきですね」と活動に共感。外出の選択肢を広げ、願いをかなえる活動に、鈴鹿さんは思いを託す。「病気や犯罪被害などで外出がかなわない人も、大切な行事の参加を諦めないでほしい。新しいつながりが生まれ、優しい気持ちになれるから」


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