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メディア考
時代の正体〈303〉萎縮のメカニズム(下) 「根腐れ」に危機感

時代の正体 神奈川新聞  2016年04月29日 11:37

神保 哲生さん
神保 哲生さん

 「国内ジャーナリズムの危機」をテーマにした日本外国特派員協会での会見。政権とメディアの距離の近さも鋭く問われた。

 

ビデオニュースの神保哲生と申します。なぜ、ただ高市早苗総務相が「電波を停止する可能性がある」と言った程度で日本のメディアは萎縮するのか、という質問にまだ答えていないように思う。NHKは予算の審議で嫌がらせされることがあるかもしれないが、民放、新聞社は報道の公平中立を求める自民党の要望書など放っとけばいい、蹴飛ばせばいいだけの話。今回「停波」に触れられた。放送局にとって、唯一、停波されるということが政府が持っている権限だと思います。それ以外は憲法で保障されているのでできない。

 皆さん、停波を恐れて萎縮しているのか。日本の既存メディアは政府と近すぎるところにいたのではないか。先ほど「オフ懇」という話が当たり前のように出ましたが、「オフ懇」という行為自体が完全に談合のように見えるわけです。政治とメディアの。ここにきて政権側がメディア側に厳しく言ってくると、メディア側は自分たちが持っている特権とか、持ちつ持たれつの関係があって営業などができなくなっているのでは、と外国の記者なんかは思っていたりする。圧力の源泉とは何なのか。

 岸井成格さん 記者クラブ制度、オフレコ懇談制度というのが、そういう状況を生み出しやすいのかもしれない。今になって思う。

 有名な田中角栄元総理の言葉があるんですよね。ロッキード事件、田中金脈時代でテレビ、新聞からばんばんバッシングを受けた時、彼が最後に言った言葉は「君ら、それが仕事だからな」。これが日本の保守政治の本当に懐の深いところです。今の政権はそれを許さない。嫌なんだよね、批判されるのが。

 田原総一朗さん 自民党という党が大きく変わったんですよ。田中角栄の時も、中曽根康弘の時も、反主流派があった。

 大体、岸井さんだって若い時に野党には全く興味を持っていなかったはずだ。自民党の主流派と反主流派のけんかが面白かった。主流派と反主流派のけんかは、政策のけんかだったの。今の野党は「NO」と言うだけ。政策がないからね。主流派にも反主流派にも緊張感があった。

 しかし、小選挙区になって、今の自民党には、主流派も反主流派もなくなった。安倍派に「NO」という人がいない。民主党ができたんだが、だらしなくて終わってしまった。

 青木理さん 日本のマスメディアの問題点は、記者クラブ制度、軽減税率の問題、再販制度の問題。日本のメディアと政治との距離というのは、ある種、世界的にみれば異常で、ガラパゴス的に発展してきた面はある。そういうマスメディアの昔からの構造的堕落は明らかにあったと思う。

 自己規制とか、自己検閲、政治権力の意向を先取りして本来やる必要のないことをやっている側面もあると思うし、同調圧力の強い日本社会というのもある。そういうものが、相まって今のマスコミの空気感、薄さにつながっている。

 マスコミ不信は強まっている。日本だけの現象ではないが、日本でもマスコミ不信という中で、基本的な原理原則まで根腐れしていくのを僕は恐れています。

 今、取材の在り方、警察取材のありようを考えないといけない。マスメディアの問題を僕らが真摯(しんし)に考えるべきだ。ただ、そうしたマスコミ不信を理由にマスメディアの原則が根腐れしていくことは、僕はどうしても我慢できない。そのことだけはあえて強調したいと思います。

権力と距離を置け



 神保哲生さん(ジャーナリスト、ビデオニュース・ドットコム代表) 高市早苗総務相の停波発言は言論の自由に対する挑戦以外の何ものでもないが、メディア側にこれを受けて立とうという気概が見えないのが気になる。政府から多くの特権を与えられている日本のメディアには強気の姿勢を取れない事情があるのではないか。

 記者クラブ、クロスオーナーシップ、再販価格維持制度、そして今回の軽減税率と、日本の大手メディアは他の業界では考えられないほど多くの特権を享受している。

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