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メディア考
時代の正体〈301〉萎縮のメカニズム(上) 共有されない原則 

時代の正体 神奈川新聞  2016年04月27日 13:47

会見に臨むジャーナリストら。(左から)青木理さん、大谷昭宏さん、岸井成格さん、田原総一朗さん、鳥越俊太郎さん
会見に臨むジャーナリストら。(左から)青木理さん、大谷昭宏さん、岸井成格さん、田原総一朗さん、鳥越俊太郎さん

 高市早苗総務相が「停波」に言及するなど、放送業界へ政治的な風当たりが強まる。折しも、「表現の自由」調査のため来日した国連特別報告者のデービッド・ケイ氏は「(日本の)報道の独立性は重大な脅威に直面している」と警告した。今春、報道番組の看板キャスターが相次いで降板したが、当事者の一人である岸井成格(しげただ)さんらジャーナリスト5人が先ごろ、「国内ジャーナリズムの危機」を日本外国特派員協会(東京都)で訴えた。海外メディアの特派員は“萎縮のメカニズム”を問い、記者クラブ制度への依存など体制側に寄りかかってきた国内メディアの脆(もろ)さを指摘した。今、メディアで何が起き、何が問われているのか。 


 

アンドルー・ホルーバッドと申します。フリーランスのジャーナリストです。毎日新聞で35年ほど前、記者をしておりました。(NHKが会見場に現れない)こういう状況において、一般市民はどうしたらいいのか。

 岸井成格さん NHKが(取材のために)会見に出席していないことと、視聴者としてNHKをどう見るかということと、本当に危機感をここ数年、感じていますが、ジャーナリズムなら当たり前のように報道しなければならない批判的な視点が全くNHKから欠けている。政府与党の言いなりなんですね。右から左へと流しているだけです。でも視聴率は圧倒的に高い。

 視聴者はこれまでの視聴習慣から、NHKのニュース7やニュース9を見ているのでしょうが、あれだけでは何も本当のことが分からない。なんであんなになっちゃったんだろう。

 私はあえて申し上げますが、今のNHKは会長人事から始まったと思います。これでNHKの内部が本当に萎縮している。権力の意に沿おうとしている。最近は、政府・与党側の言い分を最後にくっつけることでニュースを終えようとしています。異常です。

 大谷昭宏さん NHKの内部の人に聞くと、国会の討論がありますよね。野党が質問するが、与党が答える場面で終わらなければいけない。よく見てください。全部そうなっています。

 「これ、おかしいでしょう」「なんで、こんな終わり方をするんだ」と視聴者の方から声を上げてもらいたい。それが一番の大きな力になると思う。

 青木理さん 国民、市民がどうしたらいいのかと言うと、われわれメディアの責任が大きいと思う。メディアとジャーナリズムの原則みたいなものが、あまり共有されていない。放送法の問題とか、もっと報道した方がいいと思うが、やっていないので一体、何が問題なのか分からない。

 昨年、ジャーナリストの後藤健二さんが亡くなった時、米国のオバマ大統領の緊急声明にはこんな一文があった。「後藤さんは報道を通じて、勇気を持ってシリアの人の窮状を外部の人々に伝えようとした」。つまり、後藤さんのジャーナリズム活動への敬意の言葉が入っている。だけど、日本の場合は、総理大臣の声明にそんな言葉、一つも入らないんですね。

 逆に、シリアに行こうとしたジャーナリストのパスポートを取り上げてしまう、と。それが市民からもメディアからも抗議の声が上がらない。「当然だろ」みたいになってしまっているんですね。

 日本においては、ごく当たり前のジャーナリズムの原則が共有されていない。放送法の問題なんていうのは、いろいろな形で問い掛けないといけない。僕らの会見がそのきっかけや、声を上げたことが一助になればと思う。

メディアは連携を



 マーティン・ファクラーさん(ジャーナリスト、元ニューヨーク・タイムズ東京支局長) 
 権力からの圧力に対して、米国のメディアは連携します。例えば、保守系のフォックステレビが政権から攻撃されたとします。すると、リベラル系のAP通信やワシントンポストなども政権に反対します。

 オバマ政権の一番悪いところは、内部告発者や情報源を特定するため、追及するところです。AP通信の記者が政権にとって望ましくない記事を書いたことがあります。政権は内部告発者を探そうとして、その記者のEメールや電話記録を盗み見たのです。

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