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なぜSOS黙殺 相模原・児相相談の中2自殺 

社会 神奈川新聞  2016年04月24日 10:39

問題発覚を受けて相模原市児童相談所を視察した渡嘉敷奈緒美厚労副大臣(右)は、職権保護の基準作りを行う考えを示した=3月28日
問題発覚を受けて相模原市児童相談所を視察した渡嘉敷奈緒美厚労副大臣(右)は、職権保護の基準作りを行う考えを示した=3月28日

 両親から虐待を受けて相模原市児童相談所(児相)に保護を求めていた市立中学2年の男子生徒が自殺を図って死亡した問題が発覚してから1カ月がたった。親の同意がなくても強制的に一時保護できる職権を持つ児相は、生徒のSOSをどうして受け止められなかったのか。問題を教訓に市児相は対応の検証を進め、厚生労働省は一時保護する際の明確な基準づくりに動きだした。

 市児相によると、生徒は中学1年だった2014年5月の深夜、親から暴力を受けたとして自宅近くのコンビニ店に駆け込み、警察官に保護された。市児相は同6月から月1回ほどの頻度で両親の指導や生徒との面談を開始。生徒は9月と10月の面談で「養護施設に行きたい」と自ら保護を求めたという。

 10月の面談の際に市児相は生徒の一時保護を提案したが、両親は拒否。市児相は「親子の関係が改善する方向で、暴力もなく推移していた」との理由で、職権で強制的に保護する対応までは取らなかった。


■残った疑問
 市児相をはじめ多くの児相は虐待通告を受けてからの初期対応で、厚労省が作成した「アセスメントシート」を参考に一時保護の要否を判断する。「子ども自身が保護・救済を求めている」は最重要視されるケースの一つとして、「緊急一時保護」の必要性を検討しなければならないとされている。

 生徒が親族宅で自殺を図ったのは、市児相が職権による一時保護を見送った翌月。あの時、なぜ生徒を保護しなかったのか、保護していれば救えた命だったのではないか-。問題発覚後の記者会見でそう問われた市児相は繰り返した。「判断に誤りはなかった」

 「子どもを一時保護するかどうか、県内どこの児相でも判断にぶれはない。必要な場合、躊躇(ちゅうちょ)せず保護するはずだ」。県内の児相関係者は言い切る。それだけに「子どもが保護を求めた状況でなぜ保護しなかったのか、検証報告書を見なければ分からない」と首をかしげる。


■拘束力必要
 問題を受け、市は今月20日、医師や有識者ら第三者を委員とする審議会に市児相の対応に問題がなかったか検証するよう諮問し、8月末までに報告書をまとめる方針。塩崎恭久厚労相は児相が迷わず一時保護できるようにするための基準を設ける考えを表明しており、同省は市の報告書や一時保護した全国の事例などを踏まえて、職権保護する際のより具体的な基準を自治体に通知する方向で検討している。

 だが、虐待死ゼロを目指して児童虐待防止法などの改正を求める運動を展開しているNPO法人「シンクキッズ-子ども虐待・性犯罪をなくす会」の後藤啓二代表理事は「厚労省の通達や通知では児相は従う義務がない。児相が順守する義務のある法律で基準を設けなければ、何も変わらない」と法律で規定することを求める。今まで通り児相の裁量に任せれば、親との対立を避けたいという気持ちから一時保護に消極的なままだと指摘する。

 後藤代表理事は「先月国会に提出された児童虐待防止法の改正案をさらに改正し、一時保護の基準を法律で明記することが必要」と強調した。

◆一時保護
 児童相談所が、虐待や非行などで緊急に収容する必要がある児童を一時的に保護する制度。児童福祉法に基づき、児相の所長は保護者の同意がなくても職権で保護できる。期間は原則2カ月。県子ども家庭課によると、県所管の五つの児相が一時保護した児童数は近年やや減少傾向にあり、2014年度は897人。


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