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ヘートスピーチ考
時代の正体〈383〉尊厳の否定という危機 条例はなぜ必要か(上)

時代の正体 神奈川新聞  2016年08月30日 09:51

在特会による京都朝鮮第一初級学校の襲撃事件を振り返る金さん =22日、川崎市労連会館
在特会による京都朝鮮第一初級学校の襲撃事件を振り返る金さん =22日、川崎市労連会館

 ヘイトスピーチに込められた真のメッセージとは何か-。龍谷大法科大学院教授、金(キム)尚均(サンギュン)さんは公然と放たれる悪罵にのぞく思考回路にこそ目を向けるべきだと警鐘を鳴らす。ヘイトスピーチを人種差別と初めて認定した京都朝鮮学校襲撃事件の裁判闘争で法学者、保護者の立場から中心的役割を果たした金さんはいま、京都府・市に条例の制定を働き掛ける。市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」が主催した学習会での講演を紹介する。

 在日コリアンになされる代表的なヘイトスピーチに「ゴキブリ朝鮮人」というものがある。この言葉に込められたメッセージにこそ、ヘイトスピーチがなぜ許されないのか、なぜ危険なのかの答えがある。

 ゴキブリを家の中で見つけたらどうするか。たたく。なぜたたくのか。人間ではないからだ。つまりヘイトスピーチをする人に朝鮮人は人間として認識されていない。「ゴキブリ朝鮮人」の真のメッセージは、この人たちは俺たちとは違いますよ、人間じゃないですよ、たたいてよい、たたくべき存在なのですよ、というものだ。

 ヘイトスピーチをする人たちはまちなかで道を聞けば、同じ人間として快く教えてくれる普通の人であろう。それが朝鮮人であるという違いを見つけて差別をする。そうした思考のメカニズムに目を向けるべきだ。

 私たちは学校で、人権の享有主体は人間であり、市民であると教わってきた。しかし、同じ市民でも敵である限り排除の対象となり、人権の享有主体ではなくなる。ゴキブリ朝鮮人と怒鳴っている人の中では朝鮮人は敵と認識され、だから排除の対象になっている。

 在日特権を許さない市民の会メンバーらによる京都朝鮮第一初級学校襲撃事件でも「出て行け」「たたき出せ」という罵詈(ばり)雑言の中に「約束というのは人間同士がするものです。朝鮮人とは約束できません」という発言があった。朝鮮人は私たちとは違う人間以下の存在だから約束を交わすことはできないと言っている。単にひどい言葉、不快な罵詈雑言にとどまらないメッセージがここにもある。

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