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激務、パワハラ…「殺すつもり?」
時代の正体〈291〉保育士辞めたの私だ(上) まだ絶望したくない

時代の正体 神奈川新聞  2016年04月14日 09:44

取材に応じる前田さん(手前)=衆院第1議員会館(トップ)
取材に応じる前田さん(手前)=衆院第1議員会館(トップ)

 県内に住む保育士、前田玲奈さん=20代、仮名=は昨秋、横浜市内の認可保育園を退職した。激務に追われ精神疾患を発症。経済的な困窮や上司からのパワハラが追い打ちをかけ、心身ともにぼろぼろになった。それでも保育の仕事内容は大好きだ。誇りもある。だから-。 

指先の叫び


 3月30日、前田さんは国会議事堂の傍聴席にいた。

 係員から「筆記用具は持ち込み可能」と説明を受けると、B6サイズのスケッチブックと、保育園の掲示物作りで使うような7色セットのマーカーを取り出した。

 民進党の山尾志桜里議員による待機児童問題の質疑が始まると、与党側の席からたくさんのヤジが飛び交った。脚を通路に投げ出して横座りする男性議員。椅子を右に左に回転させる男性議員。両手で肘掛けを小刻みにたたく男性議員。

 一時預かりを利用している母親の悲痛なコメントを代読している最中ですら、「質問に入れ、質問」などと聞く耳を持たない。

 答弁に立った塩崎恭久厚生労働相は「皆さま方(旧民主党)の政権の時も同じです」と、当てつけのように言い放った。

 メモを取っていた前田さんの手が止まった。顔を上げ、塩崎厚労相を見つめている。目が潤み、ペン先は小刻みに震えている。

 やがて、静かにメモ帳に文字を書いた。

 〈殺すつもり?〉
 〈ただの使い捨て?〉
 保育士不足のまま進む規制緩和への疑問。悲しみ、怒り。何度もページをめくり、次第に殴り書きのようになった。

 前田さんの叫びは、指先で静かに続いた。

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