
米海軍横須賀基地(横須賀市)の元従業員の男性(52)が、部下へのパワーハラスメントを理由に解雇されたのは不当として、国に雇用継続などを求めた訴訟の判決が11日、横浜地裁横須賀支部であった。見目明夫裁判長は「(パワハラの)事実があったとは認められない」として解雇を無効と判断、国に未払いの賃金や慰謝料の支払いを命じた。
判決によると、男性は、基地内の冷蔵空調工場で班長職として勤務。2011年、「10年以上にわたり重大な暴力行為を行っていた疑いがある」などとして出勤停止となり、13年5月に解雇された。
見目裁判長は、暴行や暴言を受けたとする従業員の供述の矛盾や信用性に疑問があるとし、「事実を裏付ける客観的証拠はなく、立証は専ら関係者の供述」と指摘、「解雇手続きの違法性は検討を加えるまでもなく、解雇は無効」と断定した。出勤停止期間の賃金の未払い分と、解雇後から判決確定までの賃金とボーナスの支払いを命じた。
原告側が100万円を求めていた慰謝料については、50万円の支払いを命じた。
不当制裁にくさび勝訴の原告
「海軍人事部の暴走を止められなかった国には、この判決を深く受け止め、二度と私のような被害者が出ないような雇用主権を求めたい」
判決後、男性は横須賀市内で報告会を開き、「身の潔白が証明された」とほっとした表情を見せるとともに、出勤停止から5年の歳月を経て勝ち取った「全面勝訴」(原告団)の意義を強調した。
米軍基地従業員は国に雇用され、日米両政府が労務管理を行う。原告側によると、これまで班長職にある従業員が長期休業の後、解雇や自己退職となる事例が相次いでいたという。
原告側弁護団は今回のパワハラ問題について、「指導者を面白くないと思う従業員が訴えた不正」と指摘。当時、基地人事部がパワハラ撲滅をテーマに掲げていたことを踏まえ、「実績を作りたい思惑があった。極めてずさんな調査が行われ、不当な制裁事案が起きた」との見方を示し、「今後このようなことを基地内ではしてはいけないというくさびが打てた」と判決の意義を語った。
南関東防衛局の土本英樹局長は「国の主張について裁判所の理解が得られず残念。判決内容を慎重に検討し、関係機関と十分調整の上、適切に対処する」とコメントした。