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予知はどこへ 読めぬ巨大地震(6)運用なき制度に疑問

社会 神奈川新聞  2017年01月24日 12:03

東海地震の注意情報が発表された想定で行われた小田原市の訓練。こうした訓練を今も続ける自治体は少ない =2006年1月
東海地震の注意情報が発表された想定で行われた小田原市の訓練。こうした訓練を今も続ける自治体は少ない =2006年1月

 大磯町の防災担当者は不安を口にする。「警戒宣言が長引いたら、どうすればいいのか」

 東海地震の恐れがあるとして、大規模地震対策特別措置法(大震法)に基づいて首相が発表する警戒宣言は、各種の規制や緊急対応のスイッチだ。

 計画によると、大磯町内では東海道新幹線やJR東海道線が運行されなくなり、小田原厚木道路や国道1号は緊急車両以外の通行が規制される。町職員は緊急参集し警戒本部を設置。冷静な行動や火気の始末、水や食料の持ち出し準備を防災無線などで呼び掛ける。強い揺れで崖崩れの恐れがある地区の住民には避難勧告を発令。町民は車での移動や電話の自粛も求められる。

 同様の規制が実行される県内の対策強化地域は茅ケ崎市以西の8市11町。強化地域外からの車の流入も規制されるため、山北町の担当者も「町外に勤めに出ている人や学生が自宅に戻れなくならないか」と宣言長期化の影響を危惧する。

 地震の直前に出せるか分からない一方で、発生せず「空振り」に終わる恐れもある警戒宣言。にもかかわらず、企業活動も含めて暮らしが大きく制限される点に大震法の矛盾がある。

 神奈川新聞社が実施した調査では、県内の全33市町村が宣言発表後の影響を懸念。特に「住民の混乱や問い合わせの殺到」「経済活動停止の影響」「食料や物資の買い占めと供給不足」への不安が強く示された。川崎市や大井町など8市町は、予知の不確実性に対して「規制の内容が厳し過ぎる」と受け止めている。

 国の試算では、警戒宣言に伴う経済的損失は1日で2千億円。大震法に警戒宣言の解除規定はあるものの、何をもって地震のリスクが去ったと判断されるのか判然としない。

 だから、県の防災行政に長く携わる杉原英和安全防災部長は指摘する。「警戒宣言の期限を決めておくのも一案」。かつて視察した中国には予知の成功例があるが、当局が発表する「臨震予報」は「48時間を時限としていた」という。

 一方で、東海地震予知の見直しに向けた国の検討では、これまでのところ、新たな前兆情報の発表案が有力となっている。杉原部長は「あいまいな内容だと活用が難しい。自治体ごとに発表後の対応が異なると、混乱を招く」と疑問も呈し、慎重な議論を求めている。

 多様な問題をはらむ警戒宣言だが、県内の自治体の間では「規制は厳しくはない」との声も多い。その理由について、ある市の担当者は本音を打ち明ける。「予知が難しく運用されないのであれば、仕組みが存在していても支障はない」

 災害心理学者の広瀬弘忠・東京女子大名誉教授の見方は厳しい。「地震の直前予知はもはや破綻している。本音と建前を使い分けながら、根拠のない仕組みを放置してきた国の責任は重い」


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