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編み物通じ被災地支援 横浜・ドイツ人ニット作家

社会 神奈川新聞  2016年04月05日 12:45

 横浜市港北区に住むドイツ人のニット作家、ベルンド・ケストラーさん(51)は、生業でもある編み物で被災者の力になろうと、震災直後から県内や宮城県沿岸部などで活動している。2014年秋には、巨大毛布を地域住民らと作るイベントを同県石巻市で開催。「世界一大きな毛布」のギネス記録を更新するなど、独自の工夫で被災した人や町を盛り上げてきた。

 14年9月20日。色とりどりの正方形がモザイク柄のように体育館の床を埋めた。およそ464平方メートルの巨大毛布。ケストラーさんの呼び掛けで国内外から寄せられた20センチ四方の鍵編み約1万1250枚を、地域の若者から高齢者まで約80人と1日がかりでつなげた作品だ。

 「仮設暮らしは大変だけど、すごく楽しかった」。帰りがけに声を掛けてくれたおばあちゃんの笑顔が印象に残っている。イベント終了後、普通サイズに仕立て直した毛布は仮設住宅の住民ら225人に贈られた。

 ドイツの伝統的な編み物を独自にアレンジした作風で注目を集め、手芸雑誌などで「ニット男子」として知られるケストラーさん。1998年に来日し、翻訳などの仕事をこなしながら港北区内のカルチャーセンターで編み物教室の講師を務めてきた。

 震災発生直後の2011年3月中旬、「何か力になりたい」とインターネット上に「Knit for Japan(日本のために編み物を)」と銘打った支援サイトを立ち上げ、毛糸や手芸用品の寄付を募った。開始4カ月で、欧米や中国など10カ国から約150キロの毛糸が殺到。以来5年間、活動の形を変えながら、編み物を通じた企画を続けてきた。

 最初の1年間は避難所になったとどろきアリーナ(川崎市中原区)や宮城県南三陸町のホテルなどを訪問。世界中から届いた毛糸を使い、編み物教室を開いた。参加した女性がつぶやいた「避難所で使うあたたかい毛布がほしい」との一言をきっかけに、次の3年間は毛布用の鍵編み集めに奔走した。

 4度目の冬を前にしてギネス記録挑戦イベントを開いたのは、ケストラーさんなりの工夫だったという。「1人ではちょっとしか作れない鍵編みの正方形でも、みんなの力を合わせれば、こんなに大きなものができる」。編み物の目のように、少しずつ。復興という大きな問題を抱える被災地で、一緒に楽しみながら希望を示したかった。


世界一大きな毛布(当時)を完成させたイベント=2014年9月、宮城県石巻市(ケストラーさん提供)
世界一大きな毛布(当時)を完成させたイベント=2014年9月、宮城県石巻市(ケストラーさん提供)


 現在は活動をいったん休止し、次の企画を練っている最中だ。「被災地も5年たち、日用品はみんなそろっている。もう物資の支援はあまりいらない。これから始めるなら義援金を届ける企画がいいと思う」。仮設住宅で今も暮らす“編み物仲間”の顔が浮かぶ。

 一過性でなく、長く関心を持ってもらえる仕掛けを丁寧に考案しなくてはならないと感じる。「年に一度、新聞やテレビで被災地特集をやるけれど、過ぎたらみんな、あっという間に忘れてしまう」。きちんと続く支援でなくてはならない。だからこそあえて手を止め、立ち止まることを決めた。

 「少しずつ、東北のことを思い出しながら支援にもなるような、毛糸で人の思いをつなぐような企画をやりたい。面白いアイデアでね」。軽やかな口調で笑った。


次の活動の計画を練るケストラーさん=横浜市港北区
次の活動の計画を練るケストラーさん=横浜市港北区

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