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外需を取り込む(上) 全国で広がる民泊

経済 神奈川新聞  2016年03月31日 09:47

週末の山下公園で楽しそうに記念写真を撮影する外国人観光客=横浜市中区
週末の山下公園で楽しそうに記念写真を撮影する外国人観光客=横浜市中区

 昨年10月の3連休。一人旅で札幌市を訪れた平塚市出身の男性会社員(32)は4階建てのマンションに向かった。民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」で予約した1泊4千円のワンルーム。「ビジネスホテルより安い」と男性。メールで知らされた暗証番号でポストを開けて鍵を取り出す。家主との接触は無かった。

 マンションや自宅の空き室を貸し出す民泊が全国の都市部を中心に広がりつつある。日本家屋で暮らしたい、安く抑えたい…。宿泊者はホテルに無い価値を求め、家主は空き室の有効活用につながる。県内ではJR関内駅周辺を中心に、客室が仲介サイトに並ぶ。

 普及の背景はインバウンド(訪日外国人客)の急増による客室不足だ。観光庁によると県内のビジネス・シティーホテルの客室稼働率(2015年)は80%を超え、「実質的に満室状態」(黒岩祐治知事)。東京五輪の20年には、延べ宿泊者数が14年比で91万人増えるとの試算もある。

 インバウンド需要を取り込もうと、県は多様な宿泊ニーズに応える民泊に着目。営業を一定の条件下で認める「民泊条例」の策定に着手した。

 本来、有料で宿泊させるには旅館業法の規定に沿った営業許可が必要となる。しかし、限られた地域で規制緩和を認める国家戦略特区の一部では、自治体が宿泊日数などを条例で定めることで、業法の適用から外れる仕組みだ。県は国レベルで議論が進む新たなルールづくりの行方を注視しつつ、条例制定に向けて検討を続ける方針という。


 一方、既存の宿泊事業者は規制緩和に慎重な姿勢をみせる。県旅館ホテル生活衛生同業組合の若林伸二専務理事は「法律に沿って施設の整備や衛生管理を進める我々とは平等な競争にならない。管理が不十分な民泊を認めれば、犯罪やウイルス感染の温床にもなるだろう」と指摘する。

 県環境衛生課によると、13~14年度に無許可営業として指導した施設は3件にとどまる。看板も無く営業実態をつかみづらいからだ。それでも若林専務理事は「民泊の大半は無許可で違法。実態が進むから後追いで認めるのは法治国家としてどうか」と憤る。

 県内では、都市部を中心に宿泊施設の開発が進む。アパグループ(東京都港区)は横浜市中区海岸通に2400室規模のタワーホテルを建設する。30年に1度とも言われる活況にホテル業界の鼻息は荒い。

 一方で観光庁がまとめた県内客室稼働率を業態別に見ると旅館は48・3%にとどまる。湯河原町の旅館経営者はため息交じりに語った。「潤うのは都心だけ。地方に人は来ていない」

              ◇
 少子高齢化で国内市場が縮む中、日本経済の活性化には外需の獲得が鍵を握る。企業は販路を求めて海を渡り、国内では年間2千万人に迫るインバウンドの旺盛な消費意欲に沸く。しかし、政権の思惑とは裏腹に、それを後押しするはずの「株高・円安」は早くも崩れ去り、世界経済の先行きも不透明だ。人口減少社会で内需が先細る中、どう立ち向かうのか。現場を追った。


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