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名将の思い(1) 競争で自分を磨く

高校野球 神奈川新聞  2016年03月08日 09:43

 3月は別れと同時に、新たなステージが始まる月でもある。野球界でも「球春」が到来し、新しい競争が始まる。

 どんな社会でも競争は重要だ。人類が進歩してきたのは、競争があったから。「これでいい」と思ったときから停滞が始まる。

 投手は打たせまいと新しい球種を開発し、打者はもっと飛ばそうと打法を磨いてきた。人間の能力というのは、相手より抜きんでたい、先に行きたいという気持ちがない限り発達しない。

 競争には勝者がいれば敗者もいる。だからこそ、指導者はしっかりと理念を持って、競争の意義を説明しなければならない。負けた子どもたちをフォローしつつ、勝つことの尊さを教えてほしい。

 ただ、今の指導者は大変だと思う。近年、親たちは気に入った学習塾やクラブチームを自分で探し、子どもたちを入れる。高校の野球部でも、監督の采配に注文をつける親もいると聞く。先生、監督という肩書だけで尊敬される時代ではなくなってきている。

 子どもたちとの信頼関係をどう築くか。大切なのは、同じ目線で接することだと思う。

 私はミーティングのとき、必ずしゃがんで選手たちに話をする。立ったままだと身長差があって、目線が合わない。しゃがむと目線が合い、選手たちの表情がよく分かる。俺を使ってくれと目で訴える選手、声を掛けないでほしいと思っている選手…。レギュラーも控えも隔てなく、それぞれの気持ちを察知して指導してきた。

 ベンチに入れなくても、3年間辛抱して野球を続けてきたという過程に価値がある。我慢できた子は社会で活躍する。野球の世界では負けたとしても、人生の勝利者になれるのだ。
(渡辺元智・横浜高野球部前監督)

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 横浜高野球部を全国有数の強豪校に育て上げ、多くのプロ野球選手も輩出してきた渡辺元智さん(71)。毎月1回、約半世紀の野球指導で培った独自の視点で時々の話題を鋭く捉えます。

 

わたなべ・もとのり 横浜高-関東学院大。1968年から横浜高野球部監督を務め、昨年夏に勇退。甲子園では通算51勝、春夏合わせて5度の優勝を誇る。松田町出身。71歳。


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