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時代の正体〈269〉キャスターたちの会見(下) 「組織の枠超え連帯を」

時代の正体 神奈川新聞  2016年03月05日 11:54

高市発言に抗議する横断幕を掲げるキャスターら=2月29日、日本記者クラブ
高市発言に抗議する横断幕を掲げるキャスターら=2月29日、日本記者クラブ

 テレビ局に「停波」を命じる可能性を示した高市早苗総務相発言に抗議する声明をキャスターらが発表した。会見の席上、危機感を表明したそれぞれの発言と、報道現場から届けられた声を紹介する。

◆青木理さん・ジャーナリスト
 メディアの原理原則やジャーナリズムの矜持(きょうじ)に関わる事件が起きたときは、組織の枠を超えて連帯し、声を上げないといけないと思ってきた。政権やその応援団によるメディアへの不当な攻撃に、黙っておけない。このまま押し込まれればメディア、ジャーナリズムの原則が根腐れしかねない。

◆大谷昭宏さん・ジャーナリスト
 視聴者にはすでに多大な影響が出ているのではないか。被災地で取材し、復興が進んでいると報道する。実際進んでいるところもある。だが、復興は進んでないのにそう報道をさせられている、福島の除染は進んでいると報道させられているのだろうという意識が被災者の中に広がっている。阪神大震災のときにはなかったことだ。そこまで政権の手先になっていると思われている。国民全体にとって不幸なことだ。

◆金平茂紀さん 「報道特集」(TBS系)キャスター
 「報道の自由度ランキング」で日本は180カ国中、61位。恥ずべき事態だが、この息苦しさの原因は外からの攻撃によってではなく、ジャーナリストの内側に生まれてきているのではないかという思いがある。自主規制、忖度(そんたく)、過剰な同調圧力、それにより生じる萎縮がいまほど蔓延(まんえん)している時代はないと感じる。核実験成功を伝える北朝鮮の国営放送を私たちは半ば嘲笑しながら流しているが、自分たちの放送が異論反論を許さない、多様性のない、批判精神のないものにならない保障はない。

岸井成格さん 「ニュース23」(TBS系)アンカー
 視聴者に言いたいのは、公平・公正という言葉にだまされてはいけないということ。政治的公平・公正とはまったく違う。判断するのは国民であり、そのためにメディアが事実を伝え、チェックをする。メディアが公平・公正かは放送倫理・番組向上機構(BPO)が判断する。権力が判断することは絶対やってはいけないことだ。

◆田原総一朗さん 「朝まで生テレビ!」(テレビ朝日系)司会者
 高市発言に全テレビ局、全番組が集まって抗議すべきだ。残念ながら多くのテレビ局の多くの番組は放送もしない。何となく受け止めている。政府側は図に乗り、テレビ局は萎縮していく。この春、軌を一にして骨のある3人のキャスターが番組を降板する。偶然かもしれないが、萎縮したという構図になりかねない。高市発言には断固抗議しないといけない。

◆鳥越俊太郎さん・ジャーナリスト
 高市発言はいつでも停波させられるぞ、変なことするなよという安倍政権による恫喝(どうかつ)だ。メディア、国民をなめ切り、おごり高ぶった安倍政権の態度が背後にある。国民に代わって権力をチェックする使命がメディアにはある。だが安倍政権になってから、政権をチェックするはずのメディアが逆に政権によってチェックされている。官邸はテレビ番組、報道番組をチェックし、対するメディアには自粛や忖度、遠慮がはびこっている。政権はやりたい放題で、この国は大変なことになる。戦前のようになるかもしれないし、全権委任法を得たナチスのようになるかもしれない。

◆田勢康弘さん・ジャーナリスト
 本会議場で誰が拍手をしなかったかを安倍首相がチェックしていると複数の自民党議員から聞いた。物が言えないから自民党議員が、民主党議員にどうしてあそこで寸止めするんだ、もう一太刀切り込めと発破をかけているという話も聞いた。メディアの社長が総理と会食しているために書く内容を自己規制している現場の記者たちと同じだな、と自民党議員たちと笑い合った。ジャーナリズムは死にかけている。何より恐ろしいのは権力の意向をメディアが忖度し、追従することだ。電波を止める発言など、それに比べれば他愛のないことだ。 (欠席のため代読)



 会見では「会見には参加できないが実態を伝えてほしい」と在京キー局の現場から寄せられた声も紹介された。

◆報道番組ディレクター
 高市発言を含む一連の安倍政権下の動きで報道現場に影響が出ているのは確か。顕著なのが番組の決定権者らの自粛だ。

 やりたいのは分かるが我慢してくれ、そこまでは突っ込めないと何度も言われた。当然指摘してきた問題の掘り下げも、政権批判と取られるのではないかと恐れ、自粛している。

 これは報道側の情けなさだが、実際にある圧力によって影響を受けている。これまでも公平性に注意して報道してきたが、安倍政権になって特に自粛が強まっている。

◆中堅報道局員
 報道現場に充満する自粛の空気は一般の想像以上に深刻な域に達している。われわれはいま伝えることを伝えられていないという自責の念に日々駆られている。

 2012年12月の総選挙で自民党が選挙報道に関する要請を文書でしてきたが、政党が放送内容に細かく要請してきたことなど過去にない。政治的介入と捉え、明らかに表現の自由に抵触するという節操がまだあったからだ。

 NHKとテレビ朝日を呼びつけたこともやはり報道への政治的圧力だ。各局の記者やコメンテーター、経営陣は恥ずかしくて認めないため、多くの国民の知るところにはなっていないが、こうした文書や動きが報道現場に自粛の効果をもたらしている。

 例えば、実際に街頭でのインタビューを削ったし、デモの批判的な映像も自粛している。デモは市民の意思を表す動きだが、デモを警戒している官邸に気を使った。ニュースの選択の段階で気を使い、埋もれたニュース項目は山ほどある。

 高市発言はこれまでの動きからさらに踏み込み、電波停止という明らかに表現の自由を侵す憲法違反の発言だ。この発言は参院選前のこの時期にさらに萎縮させる効果を持っている。放送局の経営陣が慎重になり、それが現場へのさらなるプレッシャーになるからだ。

 放送局でこの問題をしっかり放送したのは三つ、四つの番組だけ。この重大な発言を扱う番組がこれだけしかないということが現実を表している。

◆若手報道局員
 報道現場の萎縮とは、意識して始まるものではなく、現場の人間でさえ分からない間に侵食されてしまうものだと感じている。

 気付けば、争点となる政策課題、例えば原発、安保を取り上げにくくなっている。気付けば、街頭インタビューで政権と同じ考えを話してくれる人を何時間でもかけて探しまくって放送している。気付けば、

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