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大舞台最高の漕ぎを ボート代表候補、荒川龍太

スポーツ 神奈川新聞  2016年03月02日 02:00

急成長を遂げる荒川(左)=埼玉県戸田市、戸田漕艇場
急成長を遂げる荒川(左)=埼玉県戸田市、戸田漕艇場

 日本ボート界に現れてから間もない星が、最高の舞台で輝こうとしている。横浜市出身で一橋大3年の代表候補、荒川龍太(21)。リオデジャネイロ五輪出場の条件である世界最終予選(5月・スイス)2位以内という狭き関門に向けて一心にオールを漕(こ)ぎ進めている。

 185センチ、75キロ。すらりとした長い両腕を優雅に回し、荒川は水面を切っていく。

 代表候補に選ばれている種目は、4人乗りの軽量級かじなしフォア。全員のオールさばきがそろわなければ個々の力量に問わず、推進力が出ない難しい競技だ。

 「技術的にはまだまだで、正確なテクニックが一番の課題。オールを引く動きにも加速感を出したい」

 競技を始めて3年弱。本人は経験の浅さからそう自己分析するが、指導する側からすればむしろ、その経験の浅さが心をときめかす。

 「フィジカルの強さに加えて、身長もあってストロークが長い。日本の選手の中でも特別。世界のトップにも引けを取らない」。日本代表の大林邦彦ヘッドコーチ(54)が期待する21歳の無限の可能性は大学入学と同時に生まれた。

 2013年春。部活動やサークルの勧誘でにぎわう東京・国立のキャンパスに荒川はいた。

 「サークルでバスケを続けようかな」。聖光学院高時代にバスケットボール部に所属した新入生もまた、学生生活を楽しみたいと思っていた一人だった。だが、端艇(たんてい)部の勧誘文句とプロモーションビデオにふと足が止まった。

 「何かひとつ夢中になれるものを-」。ボートが水面を切っていくさまに熱いメッセージ。日本一への挑戦を掲げ、全員が一つになっていく。「映像が感動的で心打たれた。ボートがかっこいいというのと、日本一が実現可能なレベルにあるということに驚いた」

 バスケットボールに打ち込んできた中学、高校と世代トップレベルとはほど遠かった。ましてや進学校。他校よりも1年早く競技を引退し、机に向かってきた。

成長加速「勝ちにいく」


 「スポーツで勝ちたいという思いがどこかにあって、それを刺激された」。頂点への憧れは勇気となり、創部130年の名門に飛び込ませた。

 トレーニングはやはり厳しかった。

 平日はキャンパス周辺を走り込み、週末は埼玉県戸田市の戸田漕艇場でボートを漕ぐ毎日。「見た目以上に難しいところもあったし、単純にめちゃくちゃきついスポーツだなと感じた。本当に泣きそうになりながらやっていた」と笑いながら始めた頃を振り返る。

 まめが破れても新たなまめができる。入部当初は痛みで夜も眠れなかった。今も手の皮はぼろぼろ。それでも、不思議と辞めたいとは思わなかったという。

 頭角を現したのは1年後、2014年だった。長いリーチが魅力の若き動力源は、自らの成長とともにチームも加速させていく。8人乗りのエイトで全日本学生選手権で2位、全日本選手権で3位に輝くと、翌15年には全日本軽量級選手権で優勝し、アジア選手権でも3位に食い込んだ。

 さらに勢いは続いた。「行けたらいいなと半分駄目もとみたいな感じ」で同年秋に日本協会の強化選手にエントリー。これに選ばれると、秋から12月にかけて行われた選考合宿でも存在感を発揮し続け、ことし1月には軽量級かじなしフォアの代表候補クルーに選出されるまでになった。

 前回のロンドン大会をテレビで眺めていた「普通の高校生」が日々の鍛錬を経て、オリンピアンを狙えるところまで駆け上がってきた。

 「自分でも驚いている。正直チャレンジするという感じだったので、まさか選ばれるとは」。代表候補に選ばれたときの感情はもう「今は五輪で勝つというのを前提にしている。若さとパワーと勢いで成長するしかない」という意気込みに変わってきている。

 もちろん、あの勧誘文句を聞いた時のわくわく感は忘れていない。「五輪はお祭りのようなイメージ。楽しいって言ったら変だけど、そこで最高の漕ぎがしたい」。新星は一等星となって輝きを放っていく。

オリンピックのボート競技
 男女とも2千メートルのコース6レーンを設け争われる。日本は1928年のアムステルダム五輪から参加。過去3度入賞しており、2000年シドニー五輪と04年アテネ五輪での男子軽量級ダブルスカル6位入賞が最高でメダル獲得はない。

 荒川の4人乗り軽量級かじなしフォアは、5月の世界最終予選で2位以内に入ればリオデジャネイロ五輪の出場枠を得る。代表選手は6人の候補の中から選考合宿中のタイムトライアルの成績などで4人を選ぶ。



チーム最上級生となった今季は大学で主将の重責も担う
チーム最上級生となった今季は大学で主将の重責も担う


 あらかわ・りゅうた ボート軽量級かじなしフォア日本代表候補。聖光学院中高-一橋大3年、同大端艇部主将。一橋大入学と同時に競技を始め、2年時の2014年、8人乗りのエイトで全日本学生選手権2位、全日本選手権3位。15年には全日本軽量級選手権で優勝し、アジア選手権にも出場し、ことし1月、日本代表候補の6人に初選出された。185センチ、75キロ。横浜市金沢区出身。21歳。


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