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「近迫」イノシシ対策(2)電気柵で「兵糧攻め」 

話題 神奈川新聞  2017年01月18日 15:55

落果したミカンをむさぼるイノシシ=2016年12月、大磯町(町提供)
落果したミカンをむさぼるイノシシ=2016年12月、大磯町(町提供)

 「冬は、山よりも里にえさがあふれている。繰り返し姿を現すのは、えさ場と決めたから」

 すでに2015年度(70頭)の2倍を超す163頭のイノシシが殺処分された大磯町。町が講習会で招いた元近畿中国四国農業研究センター鳥獣害研究チーム長の井上雅央さん(67)は指摘する。

 14年度に106万円(1・26ヘクタール)だった町内の農作物被害は、15年度に150万円(1・49ヘクタール)まで拡大。町民からは「山狩りをして一掃してほしいのが、農家の願い」とする訴えが寄せられていた。

 町内でイノシシが増えた背景には、営農者の高齢化が進み手入れが行き届かなくなった農地が「絶好の潜み場」になっている点があるとみられる。高く成長しすぎたカキ、収穫し終えた稲の二番穂、成長せず畑などに廃棄されるイモ…。これら「取られても腹が立たないえさ」に加え、市場に出回るべき野菜など「取られたら腹が立つえさ」が食い荒らされる「被害」が生じる。

 えさ場と決めれば人里近くにも住み着くイノシシ。通常は1年に5頭前後出産し、このうち数頭だけが成獣になるが、冬季でも農作物や野草が行き渡ることで栄養状態が改善し、すべての子どもが順調に成育する。山深い場所で子育てするよりも、人里で実りを享受しながら生活することが、イノシシにとっても快適なのだという。

 井上さんは、そんなサイクルを生み出しているのは人間自身だと指摘し、警鐘を鳴らす。「殺処分数は、台所の生ごみに集まるハエを数えるようなもの。『兵糧攻め』をしないと」

 被害防止には電気柵が一定の成果を上げるとした上で、「町全体で取り組まなければ本当の効果は得られない」と、対策を施す際の注意点を解説する。

 鼻でしか感電しないイノシシを防ぐには、地面から高さ20センチと40センチに2本の電線を張ることが必要で、30センチほどに1本張るだけでは幼獣に侵入される。畑の畝から約1メートル離れた場所に電線を張り、周囲の草を刈って人目に付きやすいようにし、収穫後も通電して雑草すら食べさせない「守れる畑」にする。さらに、防風樹や庭木などは地面から高さ60センチほどを刈り込んで潜み場所をなくす。

 ただ、最新技術やシステムを導入したコストのかかる設備は維持管理が重荷となり、自治体が疲弊するとし、力を込める。「住民主導でできることを進め、地域で守ることを実行してもらいたい」


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