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【最終弁論】弁護側「懲役5年以上10年以下が相当」 川崎中1殺害

社会 神奈川新聞  2016年02月04日 21:20

 川崎中1殺害事件の第3回公判が開かれた横浜地裁の法廷=4日(代表撮影)
 川崎中1殺害事件の第3回公判が開かれた横浜地裁の法廷=4日(代表撮影)

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で昨年2月、市立中学1年の男子生徒=当時(13)=が殺害された事件で、殺人と傷害の罪に問われたリーダー格の無職少年(19)の裁判員裁判。横浜地裁(近藤宏子裁判長)では4日夕の検察側の論告求刑(懲役10年以上、15年以下の不定期刑)と遺族側代理人の意見陳述に続き、弁護側が最終弁論を行った。弁護人は「被告人が主導的であることは間違いありませんが、1人ではなしえない犯罪といえます。少年B、少年Cの役割は非常に大きい」「父親は被告人との接し方の問題点を認め改善し、支えていく覚悟。今後は、十分受け皿として機能する」などとして、懲役5年以上10年以下の刑が相当と主張した。

弁護人-論告


 傷害罪、殺人罪、いずれもその成立を争うものではありません。男子生徒の若く尊い命が失われたことは、弁護人としても痛恨の極みであります。心からご冥福をお祈り申し上げます。

 争点は量刑です。どの程度の刑を科すのが相当か。犯罪そのものの重大性、情状を考慮した上で判断していただきたいと思います。弁護人として、特に考慮していただきたいことについてお話します。

 どうして痛ましい結果になってしまったのか。

 被告人はしつけに厳しいお父さんと、外国出身のお母さんの下に生まれました。父から体罰を伴うしつけを受けていました。父親は門限や規則を守らせる反面、言い訳を聞いあげたり、ほめてあげることはありませんでした。被告人は自分を認めてもらうような体験に乏しい中で成長しました。

 お母さんは言語にハンディもあり、心を許して相談できる相手ではありませんでした。あてにできる大人も乏しく、基本的に安心感、安全感が欠如しており、非常に不安定でした。幼少期、一緒に喜んでもらったり、悲しんでもらったり共感してもらうようなことが少なく、健康な自己愛はなく、共感性が培われてきませんでした。

 しつけや体罰で暴力が正当化され、けんかや暴力が物事を解決する手段にされていました。被告人は、暴力以外の解決する方法を知りませんでした。

人間関係


 被告人の中学時代、同級生とけんかし、報復として不良グループに押しかけられたことがありました。不良グループの1人と一対一になり、2、3発殴られ、被告人が逃げたことがありました。不良グループの1人は弁護人の聴取に対して「被告人は下の存在だ」と言っています。被告人より年下の生徒や同級生にもそう思われるようになり、屈辱的な態度を取られています。

 非常に狭いコミュニティーの中で、支配と被支配の関係性が立ちはだかっていました。こういった人間関係の背景に、被告人は「男子生徒に原因がある」と思い、報復しようという転嫁がありました。男子生徒をぶっ飛ばそうとしたところ、少年Cによるカッターナイフの提供で、事件の本質が変わってしまった。

 カッターナイフで切り付けたものの自分ではやりきれないと思い、少年B、少年Cに「代わってほしい」とお願いしたところ、少年Cに「もっとやれよ」と言われ、結果として切り付け行為を重ねてしまう。少年B、少年Cも手伝うことで、引き返せなくなってしまった。行為を続けていることで、(不良グループから)報復を受けるという恐怖と、途中でやめることはできないという思いの悪循環。「どうしたらいいのか分からない」という言葉に象徴されるように、負の連鎖に陥り、最悪の結果を招いてしまいます。最後は手が付けられず、破滅へと向かってしまう。問題解決能力のなさが招いた悪循環から抜け出せなくなってしまったのです。

犯行の悪質性


 (男子生徒の)多数の傷は、被告人が切り付ける恐怖を表したものです。力を入れることができず、切り付け行為を分担してもらっています。逡巡(しゅんじゅん)やためらいを表している。必ずしも悪質性に結び付くものではありません。一つ一つが殺害行為に結び付くものではありません。泳がせ行為は少年Bもしくは少年Cが言い出していて、カッターナイフで切り出したのは突発的なものです。

殺意


 突発的な殺意により及んだものです。「必ず殺してやる」といった強い気持ちではありません。

動機


 「被害者に焼きを入れよう」という動機に過ぎません。傷害から殺人に強化されたもので、カッターナイフが出されたことによる偶然の出来事によるものです。被告人が主導的であることは間違いありませんが、1人ではなしえない犯罪といえます。少年B、少年Cの役割は非常に大きいです。衣類を燃やすというのも極めて稚拙であり、ことさら悪質性の強いものではありません。

更生の可能性


 (証人だった)須藤明先生の鑑定により、被告人や被告人家族の問題点がようやく明るみに出ており、その問題点に被告人も被告人の家族も向き合おうとしています。被告人には指導に向き合う素直さもあります。須藤先生は、被告人は安定した人間関係のもとでは更生の可能性があるとも言っています。

捜査への協力


 被告人は捜査にも協力し、事件の解明に全面的に協力しています。事件に向き合うことは更生への最初のステップとも言えます。

家族の監督


 被告人の父親は被告人との接し方の問題点を認め、改善し、支えていく覚悟です。今後は、十分受け皿として機能すると思います。

 以上のことから、弁護人としては被告人の刑は5年以上10年以下の刑が相当と考えます。

被告人の意見陳述


 少年A 先ほど、男子生徒の家族の話を聞いて、どう答えたらいいのか分かりませんでした。本当にすみませんでした。

=審理終了、判決は10日午後3時半の予定

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