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【弁護側冒頭陳述】「予期せぬ事態に暴走」 川崎中1殺害

社会 神奈川新聞  2016年02月02日 12:12

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で昨年2月、市立中学1年の男子生徒=当時(13)=が殺害された事件で、殺人と傷害の罪に問われたリーダー格の無職少年(19)の裁判員裁判が2日、横浜地裁(近藤宏子裁判長)で始まった。
 弁護側は冒頭陳述で、「絶対殺すという強い殺意はなかった。ほかの少年と交代で切り付けているうちにどうしていいか分からなくなり、瞬間的に暴走し殺害した」と述べた。

弁護人-冒頭陳述


 被告人は当初、中学1年の男子生徒(被害少年)を痛めつけるだけのつもりだったが、予期せぬ事態と、逡巡(しゅんじゅん)の中で、行為を止めることができず、継続してしまい、殺害にいたってしまった。瞬間的に爆発し、暴走して、重大な結果だけが残ってしまった。関わったすべての人が不幸で悲しい事件です。

 被告人は当初から罪を認め、尊い命が奪われてしまったことに争いはありません。よって、争点は量刑です。なぜ被告人がこのような罪を犯してしまったのか、弁護人として整理していきたいと思います。

 この事件は発生当時から、大きく報道され、この事件を全く知らないという裁判員の方はいないと思う。しかし、裁判員の方には、この裁判をみて、被告人の行為に対し、どの程度の責任を負わせるのが相当か、判断してもらいたいと思います。

なぜ、被告人はここまで重大な罪を犯してしまったのか


 当初は、被害者を痛めつけるだけのつもりでした。事件の1カ月ほど前、被告人は地元の不良グループからつきまとわれるようになり、それが大きなストレス、恐怖を生む原因になりました。なぜなら、被告人は中学生のとき、同様の体験をしていたからです。不良グループに家まで押しかけられ、自分がしてしまったことの何倍にもなって暴力をふるわれ、脅かされた経験がありました。そのときは、家族が警察を呼ぶ騒ぎにまでなりました。

 被害者の男子生徒が、「被告人に殴られた」とその不良グループに言ったとき、「なぜあいつらに言ったんだ」という怒りを感じるようになりました。

 もともと被告人の周りには、暴力が存在していました。家庭でも言うことを聞かないと手を出されることがありました。周りの関係性において、家庭内での関係性において、暴力で解決すること以外の方法を知らず、暴力で解決する方法が培われていったのです。そして、「言うことを聞かなかったときは、殴ってもいいんだ」と思うようになりました。

 被告人は、共感性を持てない生育環境にありました。「どうせ、自分は理解されない」と思い、安定感、安心感が持てませんでした。

予期せぬ事態と逡巡


 少年Bは、被告人にとって一つ年下でしたが、敬語を使わない、いわゆる「ため口」で話せる存在でした。少年Cも被告人と中学、高校の同級生で仲良しの存在でした。

 河川敷に着いたとき、被告人は、被害者の男子生徒を殺そうとは、みじんも思っていませんでした。予想外の出来事、予期せぬ事態が起きたのです。

 少年Cからカッターナイフを渡され、反射的にカッターナイフで切りつける行為を始めてしまいます。被告人はこのとき、「絶対に殺してやる」という気持ちではありませんでした。被告人は、自分の行為に恐怖を感じていました。「自分一人ではできない」と、少年Bと少年Cに「代わってほしい」「止めてくれないかな」という思いがありました。結果的に、少年Bも少年Cも被害者の男子生徒を切りつける行為を手伝っています。

 「(男子生徒を)泳がせてみたらどうか」という発案も、少年Bか少年Cかどちらかは覚えていませんが、どちらかの少年から発案を受けています。

 行為を続ける中で、被告人はどうしたらいいのか分からなくなっていました。行為をやめてしまえば、「不良グループに何倍もの行為で報復を受けるのでは」と怖くなりました。行為を続けるのも怖いけれど、やめることもできない。行為を続けてしまったのは、逡巡の結果、ためらいの結果と言えます。

なぜカッターナイフを使用し、切りつけを継続してしまったのか


 被告人には、欠如していることがありました。共感性を持ち、人の気持ちに立って物事を考えることです。被告人は、自分のことも、男子生徒のことも大切に感じることができませんでした。

 なぜ、行為を止めることができなかったのか。(不良グループに報復されるという)恐怖に加え、物事を解決する能力に欠けていました。

 弁護人は、被告が反省していること、被告人の更生の可能性があること、被告人の家族が被告人を支える存在になることなどを説明していきます。

 裁判官、裁判員の皆さまには、被告人によって語られる言葉、証人である専門家からの言葉を聞いていただき、どの程度の量刑が相当かを判断していただければと思います。

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