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ハマの屋台、消える赤提灯

話題 神奈川新聞  2016年01月24日 02:00

横浜駅西口からほど近い運河沿いにたたずむ12軒のおでん屋台。近隣には割安な居酒屋チェーンも数多く出店し閉店を余儀なくされた屋台もある
横浜駅西口からほど近い運河沿いにたたずむ12軒のおでん屋台。近隣には割安な居酒屋チェーンも数多く出店し閉店を余儀なくされた屋台もある

戦後間もない頃から半世紀以上、横浜駅西口の市道を不法占有しながら営業してきた
戦後間もない頃から半世紀以上、横浜駅西口の市道を不法占有しながら営業してきた

 昭和の雰囲気を色濃く残す「ハマの屋台」の灯が消えかかっている。戦後間もない頃から半世紀以上、横浜駅西口の市道を不法占有しながら営業してきた。店主らが道路を管理する横浜市と交わした屋台を自主撤去する「期限」とした1月31日が近づいている。

半世紀、今月末に撤去期限

 横浜駅西口から徒歩2分。繁華街を流れる幸川沿いに12軒のおでん屋台が連なり、暗い通りに屋号の灯が浮かぶ。3畳ほどの店内はおでん鍋をコの字に囲むカウンターと丸いすのみ。メニューや値段表はなく、10人も入れば“満員御礼”という店ばかりだ。

 インターネットや口コミで「今月限り」の情報が広がり、屋台に寄せ書きをしたり、携帯電話のカメラをかざしたりする年配客の姿が目立つ。「われらが西口の世界遺産 ありがとう」。仕事で近くに来るたびに寄っていたというスーツ姿の男性はそう書き込んだ。「きょうで飲み納め。なくなる前に来られてよかった」


メニューや値段表はなく、10人も入れば“満員御礼”
メニューや値段表はなく、10人も入れば“満員御礼”

昭和の風情「西口の世界遺産」


 屋台は昭和30年代から安くて誰でも気軽に入れる「庶民の酒場」として、勤め帰りの会社員らの支持を集めた。だが、屋台が建つのは市道。道路法(不法占有)と道路交通法(無許可使用)に違反しているため、市や警察から繰り返し撤去を求められてきた。

 「屋台営業を平成28年1月31日までに廃止し、屋台を自主的に撤去することを誓約致します」-。全12軒の店主が連名で市長宛てに誓約書を提出したのは2010年12月。市西土木事務所の浅野泰史副所長は「店主の高齢化に加え、屋台に向けられる社会の目の変化を認識したのでしょう」と語る。

時代変わり厳しい視線も

 当初16軒あった屋台は居酒屋チェーンの進出などもあり、01~04年までに4軒が自主廃業した。1988年に県警が立ち退きを迫った際には常連客らによる存続運動が起きたが、現在、そうした動きはない。市に過去5年間で市民から寄せられたおよそ50件の意見のうち、存続を求める声は2件。ほとんどが衛生面や景観面の悪化などを理由に撤去を求めるものだったという。

不法占有、代執行も


 誓約書上の撤去期限まであとわずか。「本当はもうちょっとやらせてほしい。でも、行政にやらせてもらえない」。常連客から「おかあさん」と慕われ、この道38年という女性店主はうつむく。カップルでよく顔を出すという40代の男性は「ザ・昭和みたいな居酒屋はどこを探してもない。なくなるのは寂しい」とかみしめるように話す。

 複数の店主が屋台の存続を希望しているというが、市は行政代執行による強制撤去も辞さない構えを見せる。浅野副所長は「誓約書の存在は重い。風情がいいとか悪いとかではなく、違法状態を正すのがわれわれの役目。ぎりぎりまで理解を求めていきたい」としている。


横浜駅西口から徒歩2分。繁華街を流れる幸川沿いに12軒のおでん屋台が連なる
横浜駅西口から徒歩2分。繁華街を流れる幸川沿いに12軒のおでん屋台が連なる

半世紀以上も営業を続けてきたおでん屋台に、感謝を込めて寄せ書きをする男性客=横浜市西区
半世紀以上も営業を続けてきたおでん屋台に、感謝を込めて寄せ書きをする男性客=横浜市西区

屋台が建つのは市道。道路法(不法占有)と道路交通法(無許可使用)に違反しているため、市や警察から繰り返し撤去を求められてきた
屋台が建つのは市道。道路法(不法占有)と道路交通法(無許可使用)に違反しているため、市や警察から繰り返し撤去を求められてきた

「われらが西口の世界遺産 ありがとう」との寄せ書きも
「われらが西口の世界遺産 ありがとう」との寄せ書きも

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