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弱みと強み表裏一体
壁をこわす(1)自閉症を疑似体験 

社会 神奈川新聞  2016年01月21日 09:16

体験イベントの様子。ゴーグルや集音器などの装具で自閉症の子どもの感覚を疑似体験している参加者(手前左)に先生役の参加者が話し掛けている =東京都新宿区
体験イベントの様子。ゴーグルや集音器などの装具で自閉症の子どもの感覚を疑似体験している参加者(手前左)に先生役の参加者が話し掛けている =東京都新宿区

 障害や病気があって社会参加に難しさを感じる、自分のことを周囲に理解してもらえない、身近な人が苦しんでいるのに力になれずにいる。そうした生きづらさを打ち破ろうと奮闘している人たちがいる。その現場を記者(27)が訪ね歩くシリーズを始める。初回は自閉症を疑似体験できるワークショップ。実際に参加し、「壁」のありかを考えた。

 NPO法人「ADDS」(東京都新宿区)が主催するワークショップ。会場に入ると、見慣れぬ器具が並んでいる。集音器につないだイヤホン、底を切り落とした透明なペットボトルでできた双眼鏡のようなゴーグル。これを身に着ければ、自閉症の特性を疑似的に体感できるのだという。

 音に敏感で、独特な物の見え方がして、場の雰囲気を読み取るのが苦手-。

 そうした自閉症の子どもと日ごろ接する専門職のスタッフが製作した。

 参加者はまず、くじ引きで「自閉症の子ども役」と「先生役」に分かれる。記者は子ども役の一人になった。

 子ども役にはクイズや記号探しといった謎解きの課題シートが配られる。さらに「自分から話すのが苦手で質問ができない」「自分への指示がないと関係のない話を続けてしまう」といった設定が与えられ、行動が制限される。先生役は一人一人の特性を推測しながら謎解きをサポートする。


 

異星人 

 装具を着けてみる。

 集音器から部屋中の人の声や物音が耳に一挙になだれ込んできた。自分の衣服と胸元の名札がこすれる音、向かいの参加者が使うボールペンの先端が机に当たる音。座っていた会議用いすの脚が机に軽く当たるだけで鋭い金属音が鼓膜に響く。

 話し掛けられても相手の声を雑多な音の中から聞き取ることが難しい。ゴーグルで視野が狭められ、相手の表情もよく分からない。

 そこに行動制限が加わる。記者に割り当てられたのは「2単語以上の長い指示は聞き返す」特性。先生役から「星のマークが付いたクイズを見つけて、ここに答えを書くんだよ」と声を掛けられ、「えっ?」と返す。コミュニケーションはままならず、先生役の女子大学生も記者の前で戸惑っている。

 自分だけ異星人になってしまったような孤独感。物事をうまくこなせない劣等感。焦りと申し訳なさが頭の中で渦を巻く。

 次第に気分が落ち込んできた。

 ここでスタッフがアドバイスする。

 「長い指示を聞き取れない子どもには短く指示を出したり、紙に書いたりして工夫してみましょう」

 このひと言をきっかけに先生役は子ども役の反応を見ながら接し方を試行錯誤するようになった。指示をノートに箇条書きしてもらうことで記者も意思疎通ができるようになり、課題をクリアできた。


 

気付き

 同じグループの参加者と感想を話し合った。

 「自閉症がどんな障害か座学で習ったことはあるのに全然うまくいかなかった」と振り返ったのは先生役の大学3年生、加藤可菜さん(21)=埼玉県桶川市。教育学部で小学校教諭を目指している。「本に書いてあるような知識や対応だけでなく、一人一人の状況に合わせた支援が大切だと思った」

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