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【ルポ】ごみ屋敷 記者が見た現場

社会 神奈川新聞  2016年01月13日 02:00

玄関とみられる場所が、積み上がったごみでふさがれている=横浜市内
玄関とみられる場所が、積み上がったごみでふさがれている=横浜市内

 いわゆる「ごみ屋敷」問題の対処に向け、条例策定の議論が進む横浜市。調査、撤去といった対応策に関して、地方自治体としては根拠となる法令がないのが実情だ。ごみ屋敷の住人はさまざまな“事情”を抱えているケースが多く、早急な対応を求める周辺住民との間で、「今の制度ではどうすることもできない」と苦慮する自治体担当者。福祉分野からのアプローチを模索する動きもある中、市内の現場を歩いた。

 駅から徒歩約20分。坂道を抜け、閑静な住宅街を歩くと、2階建て住宅が目に入ってきた。うずたかく積まれた白いポリ袋の山。そこかしこが破れ、ペットボトルや空き缶などが周囲にこぼれ出ている。ラジカセ、折れ曲がった傘、屋根に置かれた逆さの机-。玄関とみられる場所も全てごみでふさがれていた。

 この家に住む50代男性は「収集所に置かれた未分別のプラスチックや金属などを持ち帰り、自宅で仕分けるため」とごみを集める理由を話す。「私が神経質なだけかもしれないが、大変だけど私が分別しないことにはね」と物静かに話しながら、ロープを伝ってごみの山を器用に上っていった。

 「夏は臭いし、ゴキブリや蚊、ハエなど虫も多い。どうにかしてほしい」。近隣住民からは悲痛な叫びが上がる。5年ほど前には自治会がごみの廃棄を求めたが、拒否されたという。双方の日常的な接触はほとんどない。

 管轄の区役所によると、男性がごみを集め始めたのは10年ほど前。区は昨年になってプロジェクトチームを設置し、福祉保健センターや消防署、土木事務所などで対応を検討したが、出た結論は「調査や撤去の根拠となる法令がないため、現時点では何もできない」(区担当者)。

 今は週2~3回、町の美化を担当する区職員が状況確認に訪れるほか、高齢者支援の職員も男性の母親に対する医療支援に足を運ぶ。少しずつ打ち解けてはきたが、「手伝うから片付けましょうと説得しても『自分で分別する』と繰り返すばかり」と進展しない。

 市内では福祉的アプローチが成功した事例もある。入院支援のため70代の単身高齢者宅へ訪問した職員が、自宅内にため込んだごみの実態を把握。高齢者は認知症だったため、老健施設への入所支援と並行して別居する親族に連絡を取り、相談から1年後、住人の代わりにごみを撤去させた。

 先のごみ屋敷に対処する区の担当者は、「住人は高齢者でも障害者でもない。福祉的支援だけでは限界がある」。その一方で「気持ちを理解しないと、片付けてもまたごみを集めるだろう」とも。条例化に向けた動きを歓迎しつつ、説得は続ける方針だ。


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