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横浜市が「ごみ屋敷」対策条例

社会 神奈川新聞  2016年01月13日 02:00

 住宅に大量の廃棄物などがある、いわゆる「ごみ屋敷」問題の対処に向け、横浜市が県内初となる条例の策定作業を進めている。当事者に寄り添う福祉的視点の重視を基本的方向性としつつ、私有地への立ち入り調査などを可能とするためのもので、ごみを強制撤去する行政代執行の必要性も議論されている。市が認識するごみ屋敷は少なくとも93カ所あり、対策を求める周辺住民は切実だ。市は2月に条例素案を作成、市民意見募集などを踏まえ年内の施行を目指す。

 市によると、ごみ屋敷の住人は1人暮らしや高齢者が多いという。苦情や相談は区役所で受け、住人が高齢であれば介護保険の案内を口実に訪問。支援の中でごみの片付けを手伝うなどして解決につなげてきたが、接触を拒否されたり行政と接点がない場合は手だてがないのが現状だ。

 ごみに見えるものでも住人に財産と主張されると関与が難しいほか、対応する法令がないため、私有地への立ち入りや調査は困難。市は社会の高齢化とともにごみ屋敷は増加すると推測する。

 昨年9月に庁内プロジェクトが発足。ごみを片付けるだけでなく、当事者に寄り添い福祉的な視点に重点を置いて取り組むことを基本的方向性とした。「本人が『集めても仕方がない』『適正処理が必要』と理解しないと、たとえ強制撤去したとしても繰り返しになる」(市担当者)からだ。

 行政代執行の必要性については、自治体によって判断が分かれる。東京都足立区や大阪市、京都市の条例には明記されたが、今年4月の施行を目指すという東京都世田谷区の条例素案には盛り込まれていない。

 京都市は昨年11月、条例に基づく強制撤去を全国で初めて実施した。幅約1・3メートルの私道に高さ約2メートルまでごみが積まれ、市の担当者は「非常時に命に関わると判断した」と話す。2時間の撤去作業でごみは45リットル袋167袋分に上った。

 条例の理念は「支援」が基本。担当者は「無理矢理撤去しても、同じ状態に戻ってしまう。住人が抱えるさまざまな問題を解決することが真の解決につながる」と説明する。今回のケースでは、住人も撤去作業を手伝い、感謝の言葉を口にしていたといい、今のところ新たにごみが増えた様子も見られないという。

 条例を制定せず福祉的取り組みで対処する自治体もある。大阪府豊中市は2005年から社会福祉協議会などと連携。社協のコミュニティーソーシャルワーカーが中心となり、地域の関わりの中で解決を図る。高齢化や認知症、経済的負担などごみが出せなくなる理由はさまざまだが、強制ではなく本人の同意を得て片付け、介護サービスなどにつなげる。「時間はかかるが、丁寧に進めている」と市の担当者は話す。

 条例の制定に向けて議論を重ねる横浜市。ごみ屋敷の定義や過料の有無、代執行の必要性や代執行費用の負担先など、検討課題は多い。市の担当者は「ごみ屋敷対策にはいろいろなツールが必要。あとはそれらのツールを、どう折り合いをつけて使うかだ」と話す。


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