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外出、こいで後押し うつ病経験糧に新事業

話題 神奈川新聞  2015年12月28日 02:00

三輪車「サイクル・キャビン」と土橋さん=茅ケ崎市内
三輪車「サイクル・キャビン」と土橋さん=茅ケ崎市内

 うつ病を克服した茅ケ崎市の男性が3人乗り三輪車を開発し、地元の人たちのちょっとしたお出掛けや散策をサポートする事業に乗り出した。男性は一時は自宅に閉じこもるほどの状態だったが、湘南の自然に癒やされ、外に出掛ける幸せを再認識したという。気軽に外出したくてもできない高齢者や障害者たちを、今度は支える側に-。経験を糧にそんな思いを描く。

 事業を始めたのは、土橋徹司さん(54)。2人が並んで座れる後部座席を備えた三輪車は「サイクル・キャビン」と命名。点と点を結ぶタクシーのような使い方ではなく、散策や周遊に用いることを想定している。1時間刻みで乗車予約を受け付け、リクエストに応じ土橋さんの運転で市内と周辺を巡る。

 きっかけは2013年6月、うつ病の発症だった。それまで約30年にわたりアパレルメーカーに勤め、商品企画などを手掛けてきたが、生活が暗転した。

 「何をするのも面倒で、一切の感情がなかった」と振り返る土橋さん。1日1度のコンビニへの買い物のほかは、外出もままならなくなった。14年春にようやく人と話せるまでに回復し、体力を付けるために始めたのが市内の散歩だった。

 「海や里山の素晴らしさに心打たれた。海岸に寝転がり太陽を浴びるだけで苦しさから解放された」

 何でもない散歩が喜びとなり、やがて思い立った。

 「外へ出たくても出られない高齢者や足の不自由な人は大勢いる。そんな人たちの手助けがしたい」

 着目したのはこの地域に利用者の多い自転車だった。市内でオーダーメードの自転車製造を手掛ける谷信雪さん(53)と知り合い、三輪車製造を依頼。2人で試行錯誤を繰り返して15年12月、こだわりをふんだんに詰め込んだ一点物の三輪車が完成した。

 車体は長さ約2・3メートル、幅1メートル、高さ1・8メートルで、重さは85キロ。一般的なベロタクシーは130キロほどだが、ペダルをこぎやすいよう軽量化を徹底した。屋根は風を受け流せるフレームがしなる構造で、ヨットのセールにも使われる完全防水の丈夫な繊維を採用した。

 また、小さめのタイヤで低くした後部座席は、肘掛けも跳ね上げ式とし、足が不自由な人でも乗り込みやすいようにした。デザインにも気を配り、おしゃれ感を出すよう心掛けた。「キャビン」には個室という意味があり、移動時間をゆったり楽しんでもらいたいとの思いを込めたという。

 「服だって新しいものはうれしいし、おしゃれなカフェに入るとうれしくなる。それと同じで、いつもとちょっと違った楽しみをお出掛けという分野で提案したい」と土橋さん。「のんびりと緩い移動は茅ケ崎のライフスタイルにも合うはず」と力を込めた。

 料金などの問い合わせは、NPO法人サイクルキャビン電話0467(40)5593。


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