1. ホーム
  2. 噴火警戒
  3. 噴火警戒 箱根山の今後(5)共生 真正面から向き合う


噴火警戒 箱根山の今後(5)共生 真正面から向き合う

フォロー・シェアボタン

神奈川新聞  2004年09月10日公開  

火山活動の影響で拠点を移し、現状を伝え続ける山口さん =箱根ビジターセンター
火山活動の影響で拠点を移し、現状を伝え続ける山口さん =箱根ビジターセンター

 噴火の脅威と、温泉や景観などの恵み。その両方の顔を持つ活火山との「共生」とは、どのようなものなのか。

 恩恵を享受する期間が長く、6月末のごく小規模な噴火でリスクが現実となった箱根山(箱根町)の住民が学ぶべき先例は、北海道・有珠山にある。

 事前の避難で人的被害を出さなかった2000年の噴火を受け、08年に道が中心となって創設した「洞爺湖有珠火山マイスター」。火山や自然の特性を学んだ10~80代の地元住民40人が現地や学校などに出向き、噴火の経験や被害軽減の知恵を語り継いでいる。多数のマイスターがいる洞爺湖町は箱根町の姉妹都市だ。

 マイスターの一人で温泉旅館の女将、川南恵美子さん(54)=北海道壮瞥町=は今夏、箱根に招かれ、自らの経験を機に抱くようになった思いを語った。「地球上にいる限り、自然現象とうまく付き合っていくしかない。噴火は必然、と真正面から火山と向き合うことが生きる流儀」

 営む旅館は有珠山山頂から約2キロ。1977年に続いて体験した2000年の噴火では、4カ月間の避難生活を余儀なくされた。おおむね20~50年間隔で噴火を繰り返してきた活火山の麓で暮らし、次の噴火が視野に入り始めた今、強調する。「火山は変化する。異常に気付くためにも普段の状態を知ることが大切」。箱根の関係者に向けては「危険なエリアなどに関する情報を正確に発信しつつ、地球の営みを感じられる場所としてアピールしてはどうか」と提言する。

 箱根山でそうした役割を担うのは、大涌谷にある箱根ジオミュージアムだ。14年にオープンしたばかりだが、今回の火山活動活発化で噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられた5月6日以降、臨時休館が続く。

 芦ノ湖に近い箱根ビジターセンターなどに一時的に拠点を移して大涌谷を見つめ続ける山口珠美学芸員は、現状を前向きに受け止める。「以前は箱根山が活火山だと知らない人が多かったけれど、今回の火山活動で理解が広がった。実際に噴火があり、それに至るまでの観測データも公開されている今だからこそ、大涌谷を多くの人に見てほしい」

 地形や地質の特徴と変遷から、太古より続く大地の息吹を知ることができる大涌谷は、箱根町を中心とした「箱根ジオパーク」の重要な見学拠点の一つ。ミュージアムの展示内容も自然や歴史が中心だったが、山口学芸員は「火山活動のことをもっと取り上げていく必要がある。これまでは十分にできていなかった防災教育も担っていきたい」と新たな役割を描く。

 そして今回の教訓を踏まえ、正確な情報発信とは何か考えを巡らせる。

 「よく『火山を正しく理解し、正しく恐れる』というが、実際にはかなり難しい。どんな現象が起きているかを理解するのは大切だが、観測しても分からないことだってある。そういう現状も含め、伝えていくしかない」

 =おわり


シェアする