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噴火警戒 箱根山の今後(4)予測 いまだ見えぬ経験則

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神奈川新聞  2005年11月27日公開  

火山性地震の波形を読み取る温地研の研究員=小田原市入生田
火山性地震の波形を読み取る温地研の研究員=小田原市入生田

 今回の箱根山(箱根町)の活発な火山活動では、噴火予測の手掛かりとなる観測成果が数多く得られた。

 噴火直前に地震計に表れた非常に周期の長い揺れ、地表付近で地下の熱水が急激に移動するのに伴って発生したと考えられる火山性微動、火山活動の消長に応じて変動する火山ガス中の二酸化炭素(CO2)と硫化水素(H2S)の比率-。いずれも18日に県温泉地学研究所が小田原市内で開いた会合で報告された現象だ。あいさつに立った里村幹夫所長は強調した。「われわれ温泉地学研究所は箱根山のホームドクターを自負している」

 火山を常時観測し、状況の変化を見極めるホームドクター。2000年の有珠山(北海道)噴火では、地震の発生状況から噴火の可能性があると判断した北海道大学の研究者の助言で、噴火前に住民の避難が完了した。

 その存在意義を見直すべきとの声が、常駐する研究者のいない御嶽山(長野、岐阜県)の噴火を機に強まっている。

 温地研は気象庁よりも密度の高い観測網を独自に敷くが、有珠山と同じような役割を果たすのは難しい。箱根山では1960年代の観測開始から今回の活動まで噴火がなく、経験則が見つかっていなかったからだ。

 火山性地震が急増し、山体膨張を示す地殻変動や大涌谷の噴気も激しかった今年5月。予想されるシナリオを報道機関からたびたび問われた竹中潤研究課長は、こう繰り返した。「このまま終息する可能性はあるが、場合によっては水蒸気噴火につながる恐れもある」

 ごく小規模な水蒸気噴火が起きた6月29日は、5月半ばにピークを迎えた地震の回数が大幅に減り、地殻変動も鈍化傾向になっていた時期だった。「これで終わるかなと安心し始めた矢先だった」と当時の心境を振り返る竹中課長は率直に述べる。「期待される噴火予測は究極の課題。観測史上初の噴火で貴重なデータが得られたものの、だからと言って次に活動が活発化したときに予測ができるとは限らない」

 温地研の研究員だった棚田俊收・防災科学技術研究所副ユニット長は懸念する。「ホームドクターと言っても、立地しているのは麓の小田原市。研究員が日常的に箱根山に入って目視しているわけではない。だが今回の活動で観測網が充実したことも踏まえると、今後はさらに高い役割が求められるのではないか」

 活動変化の指標になり得る火山ガスの測定機器も新たに整備されるものの、分析を担当する代田寧主任研究員は「2013年の火山活動のときはガスの組成変化が活動の消長に先行したが、今回はそうではなかった」と自然現象を見極める難しさを説明する。大涌谷で火山ガスの調査を続ける東海大学の大場武教授が言葉を継ぐ。「どんな現象が起きれば異変だと確信を持てるのか。どの段階で誰が何を言うべきか。予測は本当に難しい」


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