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刻む2015(8)川崎・中1殺害 SOS見逃さない

社会 神奈川新聞  2015年12月22日 09:48

殺害現場の河川敷にボランティアが設置した献花台。「元気にしてる?」と遺影に話しかけながら花を手向ける女性 =12月20日、川崎市川崎区
殺害現場の河川敷にボランティアが設置した献花台。「元気にしてる?」と遺影に話しかけながら花を手向ける女性 =12月20日、川崎市川崎区

 いつもと変わらない日常の風景が、そこにある。

 澄んだ冬空が広がる日曜午後、川崎市川崎区の多摩川河川敷。ジョギングする夫婦や散歩の親子連れらが遊歩道を行き交い、水上スキーを楽しむボートのエンジン音が聞こえる。

 雑草に覆われた一角、群青色の川面を背に缶ビールを手に語り合う男女。月に1度この場所に集まる「ボランティア」たちだ。土手の上とは違う空気。その中にいる男性がつぶやいた言葉を思い出す。

 「ここに1人でも2人でも集まれば、忘れることもない。風化させない、それが彼を守ることができなかった大人の役目であり、責任だから」

 12月20日、わずか13歳で命を奪われた市立中学1年生(当時)の10回目の月命日。久しぶりに訪れた「現場」には、以前にも増して胸を締め付ける何かがあった。「風化させない」「大人の役目」-。事ある度に多くの人たちが口にするこの便利な言葉の意味に、あらためて思いを巡らせた。

過熱する報道 


 「社会的影響が大きい事件になる。その心積もりでいた方がいい」。捜査関係者が話したメモが先輩記者から届いたのは、2月20日夜。その日の朝に河川敷で見つかった遺体が10代の少年とは、このときまで思いもよらなかった。

 真冬の川で泳がされ、友達に首を切られ、SOSが届かぬまま命を絶たれた10代の少年。一体何があったのか。殺害現場や自宅、ゲームセンター、学校…。早朝から深夜まで、川崎のまちを走り回る日々が始まった。

 捜査情報の一端が明らかになるとともに、過熱する報道陣。学校周辺の路上はテレビの中継車で埋まり、現場を調べる捜査員の上空にはヘリが飛び交った。

 容赦ない取材合戦。インターホン越しにメモを走らせ、登下校中の中学生を取り囲んでマイクを突き付ける記者たち。子連れの母親や悲しみに暮れる葬儀の参列者にレンズを向けるカメラマン。穏やかなまちの日常は、一瞬にして消し去られた。

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