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噴火警戒 箱根山の今後(3)風評対策 「安全」強調一転控え

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神奈川新聞  2004年06月06日公開  

噴火警戒レベル1へ引き下げられる3日前の閑散とした箱根登山鉄道強羅駅前=11月17日、箱根町強羅
噴火警戒レベル1へ引き下げられる3日前の閑散とした箱根登山鉄道強羅駅前=11月17日、箱根町強羅

 「4月の客室稼働率は、好調だった昨年同時期を上回っていたのに、5月以降はがくんと落ちた」。箱根山(箱根町)の大涌谷周辺で活発化した火山活動に伴う影響の大きさを口にするのは、湯河原町宮上で老舗旅館を営む70代の男性だ。

 火口のある大涌谷からは12キロも離れている。にもかかわらず苦境からの回復は難しく、11月20日に噴火警戒レベルが最低の1(活火山であることに留意)に引き下げられるまで「稼働率が前年割れになる月が何度もあった」という。

 隣町の箱根と並び、温泉保養地として名高い湯河原。火山活動が最も活発だった警戒レベル3(入山規制)の時期でも大涌谷の立ち入り規制範囲は半径1キロ程度だったが、観光面ではその影響をまともに受けた。

 大涌谷から9キロ離れた奥湯河原の老舗旅館でも「7月ぐらいまでは『地震は大丈夫なのか』という問い合わせに対応した」。担当者は「(箱根山の)状況を丁寧に伝えるよう努めた」と振り返り、複雑な心境を吐露する。「湯河原にまで影響が及ぶことになるなんて」

 湯河原では関西方面からの団体客のキャンセルが多かったという。JTB総合研究所の高松正人観光危機管理研究室長は「大涌谷との位置関係は関東に住む人には分かるが、関西から見ると箱根のすぐ横だと映ったのだろう」と分析。「観光産業にとって風評被害は大きな問題。起きている現象が小さくても、正しくない情報や誤解、認識の違いで起きてしまう」と指摘する。

 当の箱根の観光関係者は、その対応策の難しさにさらに苦しみ続けた。

 5月6日に警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられた直後には、規制エリアが町域の0・3%にとどまることを示した地図を作製し、ホームページに掲載。国などに対し「箱根全体が危ないというイメージにつながりかねない」として「箱根山」という活火山名の名称変更も求めた。

 大涌谷から約7キロ離れた麓の湯本などへの客足が鈍ることを避ける狙いではあったが、インターネット上では厳しい反応が相次いだ。「絶対に安全と言えるのか」「事実であって風評ではない」。町や観光協会、観光関係者らは軌道修正を余儀なくされ、大涌谷以外のエリアの安全性をことさら強調したりするような表現は控える方針に転じた。

 警戒レベル1への引き下げ後も、火山ガスの濃度が高い大涌谷周辺では立ち入り規制が続く。引き下げ1週間後の11月27日に湯本で町などが行った観光キャンペーンの際も慎重に言葉を選び、寄せられた支援に対する「感謝」を強調した。

 将来、再び火山活動が活発化する事態も見据え、ある観光関係者は言う。「『安全』や『安心』といった言葉は、もはや使えないのではないか。(活発化の際の)安全対策をしっかりと講じ、それをアピールしていくしかない」


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