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2015FINAL#デモは終わらない
「不完全な社会、だから学び続ける」 高校生の表参道デモ

社会 神奈川新聞  2015年12月20日 12:56

代々木公園を出て原宿へと向かうデモの先頭=19日、東京都渋谷区
代々木公園を出て原宿へと向かうデモの先頭=19日、東京都渋谷区

 師走の寒風が吹き抜ける東京・代々木公園。ケヤキ並木通りに、若々しい面々が集まっていた。「プラカード、もうちょっと小さいのない?」「ワイヤレスのメガホンある?」―。安全保障関連法が成立してからちょうど3カ月を迎えた19日、デモを企画していたのは高校生のグループ「T-nsSOWL」(ティーンズ・ソウル)のメンバーだ。参加者数は主催者発表で約千人。午後4時、西日が代々木体育館の脇から差し込み、高校生たちの顔をオレンジ色に染める。T-nsSOWLにとって、今年最後となるデモが始まろうとしていた。
 
 「成立から3カ月たちましたが私たちはさらに行動し続けます!」
 中心メンバーのあいねさんが、集まった数百人に向け語りかける。「じゃあ、コールいきます!」。速いリズムと重低音がサウンドカーから流れ始める。
 「戦争反対!」
 「憲法守れ!」
 「集団的自衛権はいらない!」
 代々木公園を出て、クリスマスムードで盛り上がる原宿へと繰り出していく。
 歩道側と車道側との間で生まれる一瞬の硬直、師走の街を歩く買い物客をあぜんとさせる。大音量と政治色を隠さないコールがきらびやかな街を席巻する。
 「安保法制、絶対反対」
 「民主主義って何だ!」
 「これだ!」
 眉をひそめるようにして遠巻きに眺める人。好奇のまなざしでサウンドカーを見上げ、スマートフォンをかざすカップル。「あっ!テレビで見たことある!」と口にし、思わずリズムに乗って手を振る高校生―。
 「一緒に歩こう」
 「選挙に行こう」
 やがて先頭が、若者に人気のブランドショップがひしめく神宮橋交差点を抜け表参道にさしかかる。

震える声と決意と仲間


福島から夜行バスに乗って駆け付けたという高校3年生のまりあさん。「このような場所でのスピーチは初めてなので少し拙いかもしれませんが、聞いてください」=19日、東京都渋谷区
福島から夜行バスに乗って駆け付けたという高校3年生のまりあさん。「このような場所でのスピーチは初めてなので少し拙いかもしれませんが、聞いてください」=19日、東京都渋谷区


 サウンドカーに乗った高校3年生のまりあさんがマイクを握った。

 「スピーチします。福島県から夜行バスに乗って今朝がた東京に着きました。このような場所でのスピーチは初めてなので少し拙いかもしれませんが、聞いてください」
 隠しきれない緊張と、街頭から容赦なく向けられる鋭いまなざし。それでも思いあって駆け付け、いまサウンドカーの上に立ち、震える手でマイクを握っていた。すかさず上がる仲間からの歓声に、背中を押されるように言葉をつないでいった。
 「私は9月19日に強行採決された安保法制に反対です。なぜなら政権は70年間変わらずに守られてきた憲法9条の解釈を変えてまで、海外に行って戦争の後方支援を行うことを積極的平和主義と言ってますが、私にはむしろ、平和とは真逆の行動だと思うからです。戦争の後方支援をすることで日本はいままでよりも戦争やテロに近づくことは目に見えています」

姑息にしてずるがしこい手法の果て


きらびやかに彩られた表参道でスピーチを続けるまりあさん=19日、東京都渋谷区
きらびやかに彩られた表参道でスピーチを続けるまりあさん=19日、東京都渋谷区

 「これのどこが平和なのでしょうか。さらにこの法制は、多くの学者が口をそろえていうように違憲であります。もはや、この法制によって日本の最高法規である憲法の存在意義すら薄らいでしまったのです。本当に法案を成立させたいと思っていたなら、解釈変更で無理矢理通そうとするのではなく、きちんと国民投票での憲法改正というプロセスを踏んでから成立させなければいけません。私の目には姑息に、ずるがしこく法案を通したようにしか見えませんでした」

 「東日本大震災、そして東京電力福島第1原子力発電所の事故による一連の被害を福島県で経験した5年近く前から私は政治に対してネガティブなイメージしか持てなくなっていました。当時13歳だった私は、政治や原発の仕組みを知らなくて、周りにいる大人たちの会話を聞く中で、いま社会でなにが起きているのかをただイメージしていました」

 「避難勧告や除染作業を初めとする事故対応の遅さ、度重なる汚染水漏れの隠蔽。周りいた大人たちは、そんなニュースを見ては、不満や愚痴や批判や嘆きばかり。そんな中で育った私は、この政治を受け入れるしかないのだと思っていました」

行動で現状を変える


 「ですが、ある日たまたま見ていたニュース番組に映り込んだSEALDs(シールズ)そしてT-nsSOWLによって、私はアクションを起こさなければ現状を変えることができないという、とても当たり前のことに気が付いたのです」

 「政治に目を向け一人一人思考することはもちろんのことですが、その上で意思表明するためには、私たちは政治的アクションをとる必要があります。その方法として一番知られているのは選挙ですが、今日のようなデモだって、日本ではまだ認知度は低いけれど、今ある民主主義制度の欠点を補う有効な手段だと思います」


福島県から来たまりあさん=19日、東京都渋谷区
福島県から来たまりあさん=19日、東京都渋谷区

どんな小さな声も


 「選挙でマジョリティの意見ばかりを尊重していては、社会的な立場の弱い人々の声が聞こえなくなってしまいます。しかしデモは、どんな小さな声だって等しく社会に訴えることができます。原発事故も、安保法制も、どちらも日本国内で起きたことです。もっと多くの国民が、高校生が、賛成反対に関わらず意思表明のためのアクションを起こすべきです。そのために、デモという手段がもっと私たちの日常に広まれば、みんなが声を上げやすくなるのではないでしょうか」

「大切なのは、あなたがどう考え、どう行動するか」


マイクを握るまりあさん。言葉につまる、そのたびに仲間から歓声が上がりまた語りだす=19日、東京都渋谷区
マイクを握るまりあさん。言葉につまる、そのたびに仲間から歓声が上がりまた語りだす=19日、東京都渋谷区

 仲間の歓声がクリスマスイルミネーションきらめく街に響く。もう声に震えや迷いはない。語気を強めるようにして、まりあさんは躊躇(ちゅうちょ)なく宣言した。

 「私はデモに参加し続けます。友達にデモのことを伝えるのは少し勇気がいるけれど、絶対に必要だと思うのでやめません。そしてこれは全国の高校生に言いたいことです。どんな方法でもいいから、意思表明を始めましょう。一度でもいいから、デモや集会に参加してみましょう。少し勇気を出して、声を上げましょう。政治は難しいけれど、政治は私たちが動かしていかなければいけないのです」

 「大切なことは、あなたがどう思って、あなたがどう行動するかです。政治をネガティブに見ることはやめて、現実を直視した上で、ポジティブに思考し想像して、そして行動に移していくことで、私たちの未来はより良くなっていくと、私はそう強く信じています。私は安保法制の廃止と、この法制を強行採決した安倍政権の退陣を求めます」

 仲間たちがマイクを引き受けコールを続ける。
 「一緒に歩こう」
 「一緒に止めよう」
 「安保法制、絶対反対」


ブランドショップひしめく表参道を行くデモの先頭=19日、東京都渋谷区
ブランドショップひしめく表参道を行くデモの先頭=19日、東京都渋谷区

不完全な社会、だから学び続ける

 高校2年のちるさんが、街に向かって呼びかけた。

 「学校の友達や知り合いの大人にたまに聞かれる質問があります。『なぜこのような政治的な行動をしているのか?』。つまり、現在多くいる政治的な行動をしない高校生と自分との間にどのような違いがあるのか、という事です」


「間違えたり、批判されたりすることは当たり前。それが民主主義」と語りかける高校2年生のちるさん=19日、東京都渋谷区
「間違えたり、批判されたりすることは当たり前。それが民主主義」と語りかける高校2年生のちるさん=19日、東京都渋谷区


 「その度、過去を思い返し、思い当たる特別な出来事や特別な思いを探してみても見つかりません。私が社会に興味を持ったきっかけは、私の周りにたまたま社会に対して関心の高い人が多いというだけの理由から、社会に関する本を呼んだり、社会について学ぶようになったことです」

 「私と多くの高校生の間には、社会に対するアクセスが多いか少ないか、それだけの違いしかないと思っています。そうしてそれをきっかけに学ぶ中で、今まで完成されたものだと思ってきた社会が、本当は当たり前に不完全であり、発展途中である、政治家だけがするものだと思ってきた政治も、何かを良くしようとする行動はずっと昔から至る所で当たり前に行われてきたことである、と考えるようになったとき、いまの社会に対して批判をし、発展を求めることは私にとって普通のことになりました」


批判恐れず主張の先にある未来


  「しかしそんなことを言っても、実は、私はあまりこのような場で自分自身の意見を主張することは好きではありませんでした。今でもSNS上で意見を発信することはできていません。理由は、批判されることが怖いからです。勉強し、いままでの自分は何も知らなかった。今の自分も何も知らないはずだ、と感じる度、何も知らない、不完全な自分の意見をさらすことが怖いと、思い続けてきました」

 「しかし、今年の夏の初め、安保法制をめぐる運動の中で、完全に分かるまで何もしないのでは、一生何もしないことになる、と思い、少しずつ自分の意見を主張し始めました。そのうちに、批判を恐れずに自分の意見を主張している人を格好いいと思うようになりました」

「間違い、批判される」それも民主主義

 「間違えたり、批判されたりすることは当たり前であり、民主主義はそれを前提とした考え方だと思うから、間違えること、批判されることは恐れるべきことではないと思っています」

 「自分で主張し、関わり合うことで社会は良くなると思うから、自分で学び考え、そして判断し続けること、主張し続けることが大事なんだと思っています。確かに『民主主義はこれだ』と思うのです」

 「安保法制は、憲法や国民の声をないがしろにして成立された、立憲主義、民主主義を崩壊させるものだと思います。戦争につながり、多くの人が殺し殺されることに加担し、また私の友達も戦場に連れて行ってしまうものです。成立されたことにより、海外で活動する人の命が危険にさらされ、またそれだけでなく、日本国内にいる人の命も危険にさらすものです」

 「だから私はいま、安保法制は必要ないと、判断をしました。そしてこれからも判断し続けます。主張し続けます。私は堂々と安保法制に反対します」

憎しみの連鎖が憎しみを生む

 次に高校2年のあずさんがマイクを握った。

 「私は今年の7月まで約1年フランスに留学していました。たくさんの経験をした留学でしたが、1番自分が影響を受けたのが今年の1月に起きた、イスラム教を風刺した新聞社がイスラム教徒から襲撃されたというシャルリエブドーの事件です。この事件をきっかけに私は二つのことを学びました」

 「一つ目はデモに対しての自分の考え方です。その日の夜にフランス全域で表現の自由を求めるデモが行われていました。彼らの暴力に屈しない、表現の自由は自分たちで守る、という固い意思が私の目には写りました。フランスで自分たちの権利を守るために立ち上がった人たちは、それまでデモってなんの意味があるのだろう、と思っていた私に考えるチャンスをくれ、そしてここに立たせてくれました。デモは確かに人の気持ちを変える力をもっているのです」


「いまのこのような国際情勢は『武器は抑止力になる』と言った人たちがつくったものなのではないでしょうか」と問いかける高校2年のあずさん=19日、東京都渋谷区
「いまのこのような国際情勢は『武器は抑止力になる』と言った人たちがつくったものなのではないでしょうか」と問いかける高校2年のあずさん=19日、東京都渋谷区


 「二つ目はそれまでの自分のものの見方が変わったことです。この事件があったとき、ホストファーザーからこんなことを言われました。『人を殺してはいけない。だけどこれでイスラム教徒のことを嫌いにならないで。あなたの学校にいるイスラム教徒の友達はみんな平和を願っている。イスラム教は平和を望む宗教だよ』。私はこの言葉を聞いて偏見や固定観念で相手を判断することがどれだけばかげたものなのかということに気付きました」

 「しかし今回のフランスの無差別殺傷事件への対応は、私たちに考える機会を与えてくれませんでした。フランスはデモを禁止してそしてすぐにISIS(イスラム国)を空爆し始め、私たちにISISは悪だ、そしてイスラム教は危険だ、という印象を植え付けました。しかし考えてみてください。なぜ難民が増え続けているのか。なぜ憎しみ合いのテロがなかなか終わらないのかを。それは、一般市民を巻きこんで武力で解決させようとするからです」

 「何の罪もない人を巻き込み、争いを繰り返すからいつまでも憎しみがなくならず、テロという脅威がなくならないのではないでしょうか。日本も他人ごとではありません。9月19日に強行採決された安保法制で日本は安易に他国と争うことができるようになってしまいました。『テロを防止するには抑止力が必要だ』とおっしゃる方もおられるかも知れません」

 「しかし、いまのこのような国際情勢は『武器は抑止力になる』と言った人たちがつくったものなのではないでしょうか。他国ときちんとした話し合いをせず、最初から武力に頼ろうとする安倍政権が理解できません。本当に平和な世界をそして、誰もが平等で幸せな世界を築くために、安保法制は役に立ちません」

「我慢の限界、退陣を」


日がくれた原宿の街を行く高校2年のあずさん(左)とあいねさん=19日、東京都渋谷区
日がくれた原宿の街を行く高校2年のあずさん(左)とあいねさん=19日、東京都渋谷区

 「そして、私はもう一つ安倍政権に対して許せないことがあります。メディアを抑制しようとする動きです。私が留学していたフランスでは表現の自由がとても尊重されていました。日本では考えられないと思いますが、フランスで一番有名なテレビ局では毎日ゴールデンタイムに政府を風刺するパロディーが放送されています。オランド大統領や大物国会議員が話している映像に台詞を付けて政府を批判するという、とてもユニークな番組です。フランスに着いたころは『こんな番組よく放送できるな』と思っていました。けれどフランスが特殊なのではなく、メディアが政府を批判することすらできない日本がおかしいのです。政府を批判するだけで番組を降板させられたり、政府与党から直々に圧力がかけられるなんて、私はなに時代を生きているのだろうと思っています。憲法にはきちんと知る権利が国民に与えられているって書かれていますよね。安保法制だけでなくて、ここでも憲法を違反するつもりですか」

 「私たちはもう我慢の限界です。まず第一に日本の憲法と日本の国民を守ってください。私は、日本の平和と憲法を守らず、日本国民から目をそらす安倍政権に即刻退陣を求め、そして世界の平和をかき乱す安保法制の廃止を求めます」

主権者として、政治を日常に

 あずさんがそう締めくくると、デモの参加者からいっそう大きな歓声が上がった。
 中心メンバーのあいねさんが何度も何度も丁寧に街へ呼びかける。
 「私たちは、安保法制に反対するデモを行っています。一緒に歩いてください」
 「安保法制が可決してから3カ月がたちましたが、私たちはまだまだ行動し続けていきます。私たち高校だって、主権者です。政治のことを考えることを日常の延長線として、これからも考えていきます」

 コールが始まる。
 「Tell me what Democracy Looks Like!」(民主主義って何だ?)
 「This is what Democracy Looks Like」(民主主義ってこれだ)
 「憲法守れ!」

 日が沈み、寒風が吹き付ける。デモ隊と街は、思い詰め込んだ言葉をまとい、込み上げるような熱気に包まれていた。

あの夏の「怒り」を糧に言葉を紡ぐ

 「きょう、ラストのスピーチです」と紹介されてサウンドカーから街を見渡したのは高校1年生ののぞみさん。語れることの意味をかみしめるように、楽しむようにマイクを手にした。

 「8月30日に国会前で声を上げた日から約3カ月がたちました。国会前のデモや説明不足だと指摘されながらも安保法制が強行採決され、成立してしまいました。この時の怒りは今も続いています。安保法制は世界で一つしかない憲法9条に違反していて、集団的自衛権により戦場へ行き、死と隣合わせになり、戦争しない国から、戦争ができる国になってしまいます」

 「武力で物事を解決するのではなく、話し合いや互いの個性を尊重し合うことこそが大切だと思います。自分と同じ人間が、人間を殺し合うというようなことはあってはならないのです。私は中学校の卒業論文で、『ナチスとユダヤ人』をテーマに考えました。ヒトラーの独裁政治はナチスの労働提供、反ユダヤ主義、鎮圧によりナチ党が権力を握り成り立ったと考えました。ナチ党は世界大恐慌で失業した多くのドイツ国民に労働提供をし、一つ一つの選挙で基盤を固めながら、影響力を広めていきました」


この日最後となるスピーチに臨んだ高校1年生ののぞみさん=19日、東京都渋谷区
この日最後となるスピーチに臨んだ高校1年生ののぞみさん=19日、東京都渋谷区

鎮圧恐れ黙ることが独裁を生む


 「そしてナチ党が政権を握ったころは反ユダヤ主義が広がり、いつの間にかドイツ国民は政府に向け、声を上げることも意見を言うこともできませんでした。鎮圧されてしまうか、殺されてしまうからです。当時の牧師、マルティン・ニーメラーの詩の一部を読みます。『ナチスが最初、共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は共産主義者ではなかったから。彼らが労働組合員を攻撃したとき、私は声をあげなかった。私は労働組合員ではなかったから。そして、彼らが私を攻撃してきたとき、私のために声をあげるものは、誰一人残っていなかった』」

 「この詩から、第2次世界大戦中のドイツは、ヒトラーの考えに背く人から鎮圧し、自分に関係のないことだと放っておいたら、だんだんと周りが鎮圧され、次第に政治に声を上げることもできず、鎮圧されることが国民全体に広がっていく恐怖になったことが分かります」
 
 「安倍総理も、アベノミクスによる企業への応援、盗聴自由法案、及びヘイトスピーチ法での政府に対するデモや意見を発することの禁止、憲法改正、そして安保法制など、少しずつ新しい法を作ったり改正したりと影響力を広めていき、ヒトラーのような独裁政権を握ろうとしています」


日はすっかりと暮れて冷たい風が吹き付けるが不思議を熱気に満ちていた=19日、東京都渋谷区
日はすっかりと暮れて冷たい風が吹き付けるが不思議を熱気に満ちていた=19日、東京都渋谷区

 
 「でも、今の日本と当時のドイツでは異なることがあります。それは、今このようなデモなどで政府に向け自分の意見を言え、声を上げることができる自由があります。そしてこんなに沢山の人が声を上げています。当時のドイツとの大きな違いだと思います」

「戦争は何も生まない」

 「鎮圧されてからでは遅いです。私たちはこれからも自分の考えを持ち、意見を政府に言い続けることが大切です。そして戦争という同じ過ちを繰り返さないために、ドイツのように日本も歴史に背を向けず向き合うべきです」

 「最後に、安保法制が通ったことにより戦争ができる国になってしまいます。一歩、また一歩、ヒトラーのような独裁政権に近づいています。戦争に行くのは私たちです。私たちの未来を、そして運命を戦場に行かない安倍総理や、与党の人たちに決められたくないです。ヤバイって思ったころには自分が戦場に行ってるかも知れません。家族や友人、恋人、大切な人が自分の周りにいて、平和や幸せが保たれています。この当たり前の生活や大切な人を戦争で失うのは絶対に嫌です。戦争は幸せも喜びも何も生みません。私は安倍政権の政治の行いに不安と怒りを覚え、独裁国家を防ぎ、ヒトラーが犯した過ちを日本でも繰り返さないために、そして平和なこの日常や幸せを保つために、私は声を上げていきます。私は安保法制に反対し、安倍政権の退陣を求めます」

声上げ、周りの人が変わっていく


 デモの先頭が原宿駅前を通過する。熱気に包まれた雑踏の中を抜ける。ひときわコールが盛り上がる。
 「憲法守れ!」「戦争反対」「集団的自衛権はいらない」「安保法制絶対反対!」

 ゴールの代々木公園が近づく。日はすっかり暮れていた。スタートした午後4時からおよそ2時間かけ代々木公園から表参道、そして青山通りを抜け原宿へ。
 


原宿駅前、竹下通りの入り口近くを通り抜けるデモの先頭。道行く人がスマートフォンをかざす。ひときわコールに熱が入る=19日、東京都渋谷区
原宿駅前、竹下通りの入り口近くを通り抜けるデモの先頭。道行く人がスマートフォンをかざす。ひときわコールに熱が入る=19日、東京都渋谷区


 デモを終え、終始先頭で横断幕を持ち続け歩いた高校2年生のあさひさん(17)=川崎市出身=に聞いた。
 
-反対の行動はいつごろから加わっているか。
 「国会前で抗議行動が始まった(6月)ころから。いま住んでいるのは山梨県ですが、9月18日には学校帰りに特急列車『スーパーあずさ』に乗って駆け付けた」
 「可決された後も、月に一度くらい勉強会を開催したり参加したりしてきた」

 -学校帰りに国会前へ行き、遅く帰ることを親はどう受け止めているか。
 「可決される少し前、父から『自分の意見をはっきり言える子に育ってくれた。無関心だったり、難しいからといって見過ごすような子ではなくて良かった』と言われた。遊びに行くんじゃないってことが分かってもらえていたことが、本当にうれしかった」


メガホンを持ち先頭で声を上げるあさひさん(左)=19日、東京都渋谷区
メガホンを持ち先頭で声を上げるあさひさん(左)=19日、東京都渋谷区


 -安保法制成立から3カ月がたった。デモに対する街の雰囲気をどう感じた。
 「反対デモは3カ月前より、受け入れられているように感じた。可決によって興味を持った人が増えたのかも知れない。今日も手を振ってくれる人がたくさんいた。歩道橋には『民主主義ってこれだ』と横断幕を掲げている人がいて、本当にうれしかった」
 
 -今後の活動は。
 「可決してしまったんだからどうしようもない、という人もいるけどそうじゃない。ことしの夏の国会前の映像や、高校生も反対の声を上げているということで、私の周りの人もずいぶん変わった」
 「高校の先生が『君がこんなにがんばっているのに僕ははっきり意見が言えず、自分のことが恥ずかしい』とまで言われた。デモに意味はある。続けていきたい」



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