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丹沢ブナ林を衰退させる3つの要因 自然環境保全センターが解明

社会 神奈川新聞  2015年12月20日 10:50

枯死し、幹が折れたブナ。ブナハバチの食害が原因とみられる=2013年5月、西丹沢の檜洞丸
枯死し、幹が折れたブナ。ブナハバチの食害が原因とみられる=2013年5月、西丹沢の檜洞丸

 丹沢山地の環境悪化の象徴とされるブナ林の衰退問題で、原因解明を進めてきた神奈川県立自然環境保全センター(厚木市)は「大気汚染、水ストレス、ブナハバチによる食害の複合作用を確認した」との結論をほぼまとめた。今後はブナハバチの大量発生を抑える対策を本格化させるなどして、目標とするブナ林の再生事業に入る。

 ブナの天然林は、丹沢の標高700~800メートル以上に生育しているが、1970~80年代から衰弱・枯死が目立ち始めた。こうした問題を受け、県が93~96年度に実施した丹沢大山自然環境総合調査を契機に原因解明の取り組みがスタートした。

 当初原因は、首都圏から約50キロにあり、工場や自動車から排出される大気汚染物質の影響を受けた酸性雨(霧)と考えられた。しかし、その後の調査研究で土壌の酸性化の兆候は見られず除外。二酸化硫黄においても、80年代以降は環境基準を満たしており、関与度は低いとされた。

 一方で主因に浮上したのが有害な光化学オゾン。県内では2000年以降、顕著な上昇が見られ、平地より山岳部の濃度が高い特徴も分かった。例えば、西丹沢の犬越路の観測点(標高920メートル)では夜間の値が県平均の3~4倍となっている。

 水需要に対する供給不足の程度を示す水ストレスは、稜線(りょうせん)部の南向き斜面を中心に乾燥化が進んで、強まっている。地球温暖化や少雪化、増え過ぎたシカの採食によって林内の風通しが良くなったためと推測している。

 最も新しい要因と指摘されたのがブナハバチの大量発生。丹沢で最初に確認されたのは1993年で97年、98年、2007年、11年、13年、15年と頻発している。

 大量発生の解明はまだ十分ではないが、食害域は丹沢山や堂平から加入道山、大室山、檜洞(ひのきぼら)丸(まる)(標高1601メートル)と緩やかに西方向に移動。自然が比較的多く残されている檜洞丸では、枝枯れが目立つなど健全度が悪化しているブナは約4割に達している。

 同センターの山根正伸・研究企画部長は「20年余りに及んだ調査研究の結果、ブナ衰退の仕組みはオゾンと水ストレスで基礎体力が低下、ブナハバチの食害が複数回加わることで衰弱・枯死に至るとほぼ特定した」と説明している。

 県の丹沢大山自然再生計画は現在2期目(12~16年度)にある。専門家らからなる委員会による中間点検では「ブナ林の衰退抑制や再生に道筋が見いだされた」と評価。3期目では、開発したブナハバチの防除技術の実証を進めながら、期待されるブナ林の再生事業に踏み出す予定。

 ◆ブナハバチ ハバチ科に属し体長は1センチ程度。4~5月に芽吹き始めたブナの葉の裏側に産卵する。ふ化した幼虫はアオムシ状で6月までに葉を食べて成長。地面に落下して地中で繭を作り越冬、翌年の春に成虫となる。県は防除対策として食害発生の事前予測や幼虫を捕獲する粘着テープ、薬剤注入などを開発している。


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